×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

10


「マクゴナガル先生、今年のイッチ年生です」

「ご苦労さまです、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」


マクゴナガルと呼ばれた、黒い髪をきっちりと結った背の高い魔女が、集まった一年生全体を見回して口を開いた。


「ホグワーツ入学おめでとう。大広間につく前に、今から皆さんには組分けの儀式を受けてもらいます。寮生が学校でのみなさんの家族のようなものです。寮は四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリン。学年末には、最高得点の寮に寮杯が与えられます」


「学校側の準備ができるまで、静かに待っていてください」マクゴナガル先生は新入生たちにそう言い残し、部屋を出ていった。

新入生たちの顔はみんな不安げだった。いったい自分は何処の寮だろう。どうやって組み分けを行うのだろう。みな一様にそう考えていた。


「本当だったんだな。ハリー・ポッターがホグワーツに来るって」


その時、周りの沈黙を破ったのは、ボートで一緒だった気取った態度をとるプラチナブロンドの髪の少年――ドラコ・マルフォイ――だった。マルフォイの両脇にはガッチリとした体格の男子二人が、ボディガードのように立っている。

マルフォイがそう言うと、周りの人たちは「ハリー・ポッター?」と口々に囁き、視線をハリーに向けた。
マルフォイは薄く笑いながらハリーに歩み寄る。


「こいつはクラッブで、こっちがゴイル」


視線に気づいたマルフォイが、無造作に言った。


「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」


隣にいたロンが、クスクスと笑いをごまかす様に軽く咳払いをした。だが、マルフォイが目ざとくそれを見咎めた。


「僕の名前がおかしいか? 君が誰だか聞く必要もないね。赤毛にそばかす、ウィーズリー家の子だろう」


マルフォイに睨まれたロンは肩を縮ませる。
マルフォイは再び、ハリーに視線を向けた。


「魔法族にも、良い家柄とそうでないものがいる。間違ったものとは付き合わないことだね」


「僕が教えてあげよう」マルフォイはハリーに手を差し出して握手を求めた。だが、ハリーはその手を見つめただけで、握手には応じなかった。


「いいよ、友達なら自分で選べる」


ハリーは冷たく言い放った。
その態度がマルフォイは気に入らなかったらしい。少しの間、ハリーを睨みつけるように見つめると、今度はハリーの隣にいたディーアに向いた。薄青い瞳を突然向けられ、ディーアはビクリと驚く。


「エヴァレスト! 君は僕と同類だろ? こんな奴らと付き合うより、僕といたほうが君のためになると思うが」


ディーアは、初めてできた大切な友人たちを貶され、少なくともマルフォイに怒りを覚えた。ハリーと同様に言い返してやろうとするが、口を開けた途端、ハリーの言葉が被さった。


「ディーアは君なんかと違う」


またもやマルフォイはハリーを睨む。二人の間に火花が散っていると、戻ってきたマクゴナガル先生が、手に持った洋紙でマルフォイの肩をトントンと叩いた。先生も戻ってきたこともあり、それ以上二人は何も言わず、この場は収まった。


「組み分けの儀式がまもなく始まります」


「さあ、一列になってついてきてください」マクゴナガル先生に続き、新入生たちはぞろぞろと大広間へと足を踏み入れた。

大広間は素晴らしい空間だった。高い天井には夕空の星が輝き、無数に浮かぶろうそくのキラキラした明かりが揺らめいている。「本当の空に見える魔法がかけられているのよ」ディーアの少し後ろを歩いていたハーマイオニーが、友人に教えていた。

新入生たちの目の前には、一つの椅子と帽子が置かれていた。帽子はつぎはぎのボロボロで、とても汚らしかった。すると、帽子はピクピクと動き出し、口らしい口を開いて歌いだした。グリフィンドールか、ハッフルパフか、レイブンクローか、スリザリンか、どの寮へ行くか。そんな歌だった。

歌が歌い終えると、全員が拍手喝采をした。


「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組み分けを受けてください」


マクゴナガル先生は長い羊皮紙を開き、順番に名前を呼んでいった。
次々に新入生たちは呼ばれていき、組み分けられた寮へ拍手に包まれながら向かっていく。

知り合いの中で最初に呼ばれたのは、ハーマイオニー・グレンジャーだった。次にネビル・ロングボトム。二人ともグリフィンドールになった。
ネビルの次はドラコ・マルフォイ。彼は帽子が被される前に、スリザリンと判決を貰った。
そして、ハリー・ポッター。呼ばれた瞬間、辺りはざわめいた。みんなよりも時間がかかったハリーは、グリフィンドールに決定した。グリフィンドール生は「ポッターを取った!」と大喜びした。
そしてロン・ウィーズリー。彼の家族はみんなグリフィンドールだった。ゆえに、当たり前のように彼もグリフィンドールへ決定した。


「エヴァレスト・ディーア!」


名前を呼ばれ、ディーアは椅子へと足を踏み出した。エヴァレストと呼ばれたとき、ハリーほどではなかったが、周りの人たちはコソコソと囁き合った。みな一様に「エヴァレスト?」「没落した名家じゃないか」「見て、銀色の髪よ」と囁く。

椅子に座り、帽子をかぶせられる。

『うーん……また難しい……』古ぼけた組み分け帽子は頭をひねる。


『君は賢く、真実であろうとする。己が決めた道を突き進む勇気もあり、またスリザリンに相応しい。さて……どうしたものか……』


組み分け帽子は悩むに悩む。
ディーアはとくに口出しすることは無かった。ただ思っていたのは、自分の事を知りたいという、欲求だけだ。


「よろしい……グリフィンドール!!」


グリフィンドールのテーブルから、わっと歓声と拍手が上がった。
ディーアはそこへ真直ぐと向かうと、年上の赤毛の男子生徒が丁寧にあいさつをした。


「やあ。僕は監督生のパーシー・ウィーズリー。困ったことがあれば、僕に何でも聞くと言い」

「ありがとう、パーシー」


握手を交わして、席に着いた。

「ディーア! 君と一緒になれて僕嬉しいよ!」ハリーは笑顔を向けた。
「私もよ、ハリー! ロンも一緒でよかったわ」ディーアはハリーとロンにそう言った。

組み分けが終わり、校長先生の合図で目の前に突然ご馳走が現れ、楽しい食事が始まった。とくに新入生たちは、目の前に豪華なご馳走が現れ、みんな思い思いに食事に手を付けた。ディーアも周りと同じように食事を楽しもうとすると、駅で会った赤毛の双子が声をかけてくる。

「やあ、ディーア」片割れが言う。
「グリフィンドールへようこそ」もう一人の片割れが言う。


「俺はフレッド」
「俺がジョージ」

「あなたがフレッド、あなたがジョージね」


ディーアは交代に双子を見て、しっかりと覚えるように指をさして復唱する。
すると双子は面白そうに笑った。

「それにしても、君がスリザリンじゃなくて安心したよ」ジョージが笑いかけながら話す。
「ああ、見ろよ。あいつら、ディーアは絶対自分たちの寮に来ると思ってただろうぜ?」フレッドはスリザリンのほうに目を向ける。

ディーアもスリザリンのほうを見た。すると、スリザリンの数人はじっと唖然とした様子でディーアを見ていた。その中にはマルフォイもいた。マルフォイと目が合うと、彼は一度睨んだ後そっぽを向く。先程ので嫌われてしまったらしい。


「君の髪、見れば見るほど不思議だね」

「瞳もだ」

「うまく言い表せないけど、キラキラしてて……うーん……」


ジョージとフレッドは上手い言葉を探したが、見つからず「とにかく凄い綺麗だよ!」と簡潔に言葉を述べた。
ディーアは指で髪を遊び、照れくさそうに笑う。


「私、此処へ来て初めてこの髪や瞳を褒められたの」

「嘘だろ? 誰もかい?」

「私は孤児だったからマグルと育ってきたけど、マグルにとってこの色は不気味だったみたい」

「酷いな。まあ気にするなよ、奴らにはその魅力がわからないだけさ」

「ありがとう。フレッド、ジョージ」


心から思った。
ここの人たちは優しい。今まで感じられなかったもの、得られなかったものが、ここでなら全て手に入れられる。

今日から此処が私の家だ。ディーアは心から、思った。