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07


汽車が出発して、子供たちを見送る親たちの姿が見えなくなったころ。ハリーとディーアがいるコンパートメントの扉の戸が開いた。そこから覗いていたのは、あの赤毛の兄弟たちの中にいた、一番下と思われる男の子だった。


「ここ空いてる? ほかはどこもいっぱいなんだ」

「うん、いいよ」


ハリーとディーアは頷き、快く迎い入れた。
赤毛の子はディーアの隣に腰を下ろす。


「僕、ロン。ロン・ウィーズリー」

「僕、ハリー。ハリー・ポッター」


それに続きディーアも名前を言おうと口を開けたが、驚いて目を丸くしたロンの言葉によって押し黙らされてしまった。

「それじゃあ、きみ……アレがあるの?」ロンは言いにくそうだった。
「アレって、なに?」見当もつかずに聞き返すハリーに、ロンは静かに囁いた。「傷跡」ハリーは気にせず、前髪をあげて稲妻の傷跡を見せる。論はそれを見て「すっげえ……」と感嘆の声を零した。

ハリーへの注目が済むと、隣に座ったディーアへやっと視線が向いた。


「あ、ごめん……きみは?」

「私はディーア、ディーア・エヴァレスト。よろしく」


「きみ、いまエヴァレストって言った?」信じられないと聞き消すロンに、ディーアはやっと今まで聞きたかった疑問をぶつけることができた。


「どうしてエヴァレストの名前を知っているの?」

「君、自分の事なのに何も知らないのかい?」


きっとロンにはそんな気は無かっただろう。だが、少し小馬鹿にされた気がしたディーアはムッとなって、孤児院育ちだから知らなくても当然だと言い放った。そうすれば予想した通り、ロンは申し訳なさそうな顔をして、エヴァレストについて話してくれた。


「エヴァレスト家は魔法界でも有名な家系の一つだよ。なかでもエヴァレスト家は異質でね、独自でいろんな呪文とかを研究してたみたい」


それを聞くと、エヴァレスト家は周りから異質な眼で見られていたのだろう。そして、それを気にしないくらい、研究熱心な人たちがいたのだろう。


「それで、いつだかの当主がその力を一族だけのものにするために、自分に呪いをかけたんだ」


「呪い?」ハリーがディーアに代わって聞いた。
「うん。でも、本当はよくわかってないんだ。あくまで噂だから」ロンは答え、続ける。


「でもそれ以降、エヴァレスト家でその力を継いだ人は決まって銀髪をしてたんだ」


そこでディーアは、初めて自分の髪色の意味を知った。
ディーアは正直、この髪や瞳の色は好きではなかった。孤児院で主に迫害されていた理由は魔法という力だったが、この容姿も嫌われた理由に入っている。銀色に赤い眼。どうみても不気味に見えただろう。

「なにか不思議な力でも持ってるのかい?」ロンがそう聞く。
「見当もつかないよ。なにせ、魔法を知ったのもつい最近だもの。何が不思議なのかも分からないわ」ディーアは首を振った。
「その気持ち、よくわかるよ」つい最近、魔法を知ったハリーは同意する。

ディーアは自分の髪を一束救い上げ、見下ろした。自分の髪を気にするディーアに、ロンやハリーは声をかける。


「気にすることないよ。ただの噂だし、君の家系は特別銀色だっただけかもしれない」

「僕は好きだよ」


「君の髪」ハリーは続ける。ハリーは同意を求めるようにロンを見つめると、呂文も頷いた。「うん」


「星を集めたみたいにキラキラしてる」

「瞳もルビーみたいだしね」


二人はそろって、今まで蔑まれてきたものを宝石のようだと褒めるものだから、ディーアは慣れていないこともあり、真っ赤になって照れてしまった。ボソボソと「ありがとう」と告げると、三人はよりきずなが深まったように感じ、笑顔を見せあった。