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- ナノ -
数日後――夜、日本。
月や星が夜空を飾る時刻。


「……」


ディーアは月の光のみに照らされた洋館に訪れ、一室に置かれた椅子に腰を下ろしていた。
そのラブラドライトの瞳は閉じられ、気配察知に全てを集中させる。

イギリスから日本へ旅たち、数日が流れた。
日本に到着した日の夜。セイバー、アーチャー、ランサー、ライダーの召喚が行われた。アサシンは既に現界している。
6騎のサーヴァントの召喚が終わり、残るはキャスターのみだった。が、今日の朝方に召喚が確認された。

――全7騎のサーヴァントが召喚された。
――準備は整い、役者がそろった。


窓から差し込んだ月光がディーアを照らす。
それに反射して銀の髪が朧気に輝いた。

やがて、ラブラドライトの瞳が開かれた。
地面に注いだ視線は逸らされ、窓の向こうに浮かぶ月を見上げる。

気配を探ったところ、そして他のマスターたちの使い魔から情報を盗んだところアサシンはアーチャーによって討ち取られたらしい。
しかし、それにしては早すぎる。また手際が良い。
おそらくアサシンはまだ死んでいないだろう。


ディーアは椅子から立ち上がり、部屋を出た。そのまま洋館の広間へと向かった。
この洋館は日本に到着した日に見つけた。恐らく、何処かの金持ちか何かの別宅なのだろう。余り古びてもいなく人もいないため、拠点としている。

広間にたどり着くと、その中心の床には魔法陣が描かれていた。
昼間に準備したものだ。

いよいよ、イレギュラーの8騎目のサーヴァントを召喚するのだ。

しかし、上手くいくとは限らない。サーヴァントを召喚できない可能性のほうが大いにあり得る。
だが、ディーアはイレギュラーの存在。ならば、イレギュラーな事態も起こりえるだろう。

ディーアは魔法陣の前に立ち、片手を伸ばす。

聖遺物は無い。しかし聖遺物は在り。
この身こそ聖遺物。あらゆる過去、未来、現在に存在し存在しえない者。


「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」


淡く魔法陣が赤く輝きだす。


閉じよみたせ閉じよみたせ閉じよみたせ閉じよみたせ閉じよみたせ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」


淡い光はやがて強くなり、魔力が満たされていく。
それにより生じた風がディーアの銀髪を靡かせる。


「――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」


前へと差し伸べた片手に片方の手を添え、力強く、応えてほしいと思い祈りを込める。


「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――」


片手の甲に、赤い太陽のような痣が浮かび上がった。

呪文を唱え終えると一際輝かしい光を放ち、生じた風や煙で辺りを包んだ。
ディーアは息を潜めながら深呼吸をした。目の前の一点を見つめ、煙がやむのを待つ。
煙の中から姿を現した。視界がはっきりと開いたのち、ディーアは見覚えのあるその姿に目を見開いた。

白髪に、それと同じぐらいの白い肌。全身に黒を纏い、胸には赤い鉱石。黄金の耳飾りに黄金の鎧を身に着ける。
暗闇を照らす黄金の光――。

――やがて、彼は問う。


「サーヴァント、ランサー。真名をカルナ。問おう、お前が俺の――マスターか」


息をのみ、ただただ彼を見つめていたディーア。
彼は懐かしむように、愛おしむように笑みを浮かべた。




暗中に輝く鋭利なる黄金

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