High school entrance
早朝――。
目覚まし時計により目を覚ました夜月は、時間を確認すると壁に掛けられた制服を手に取った。
黙々とそれに着替え、太もも中間辺りまでの長い黒色の靴下をはく。
髪は少し解かし、リビングに行ってパンをつまむ。
朝食を終えるとバッグを持って外へと出る。
今日から、雄英高校に通うことになる。
試験は合格。筆記はもちろん、稼いだポイントも多くそれにプラスして先生たちの評価ポイントも高得点。
無事入学できた夜月は学校へと向かった。
クラスは1-A。
その教室を見つけると、大きな扉に驚きながらもそれを開ける。
勿論、注目は集まる。
時間も時間だ。全員いるだろう。
「君、規定時間5分前だぞ! 俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
しっかりとした人だ。
眼鏡の人は一言添えると自己紹介をして、よろしくと手を出す。
「……瓦楽夜月」
そういって握手を交わす。
すると教室の中に「あっ!!」という声が響いた。
なんだとそちらに目を向ければ、赤髪の少年がこちらを指さしていた。
彼はいそいそとこちらへ近寄る。
「あん時はありがとな! 俺は切島鋭児郎、よろしくな」
「瓦楽夜月。よろしくね、切島」
切島は「おう!」と笑う。
どうやら彼の言葉からして、実技試験で助けた黒髪の人だったらしい。今は赤い髪をあげているが、合格後にでも変えたのだろう。
夜月は握手を交わすと席へと向かった。席は一番後ろ、一つだけ列から出てる場所だ。
その斜め前には白と赤の髪をした彼がいる。
あぁ、そういえば、此処に行くって言ってなかったな。
「……」
席に向かう途中、オッドアイの瞳と目が合ったが何事もなく、席へと付いた。
途端。
「はい、静かになるまで8秒かかりました」
寝袋に入った人が、ぬっと出てくる。
みんながなんだなんだという中、寝袋から出た男は言う。
「担任の相澤消太だ。よろしく」
なんだ、担任だったのか。と夜月は思う。
周りの人たちが担任のインパクトに動揺していると、相澤はそっちのけで続ける。
「取り敢えずお前ら、体操着着てグラウンドでろ」
それだけ言い捨てると相澤は去っていく。
いきなりの事に動揺しながらも、先生の指示という事で各々更衣室へと足を運び始めた。
夜月が面倒くさそうに立ち上がり、廊下に出たのは最後だ。
歩き出そうとすると、待っていた轟が声をかける。
「瓦楽」
振り返ると、いつものように表情を崩さない轟。
彼は淡々と続ける。
「お前、此処には来ないじゃなかったのか」
彼にとっては最もな疑問だろう。
何せ、夜月は以前、轟からの誘いを断ったのだから。
「……ちょっとした手違いだよ」
それさえなければ来ることはなかった、と言うように夜月は言う。
それだけ言うと夜月は止めていた足を進め、更衣室へと急いだ。
「そうか」
多分夜月には聞こえていないだろう。
轟はそう答え、自分も前へ足を運ばせた。