Tournament match, Second game
第二試合――飯田VS塩崎。
夜月は次の試合のため、控室へと向かった。轟のことも気になるが、今は頭の隅に追いやり、次の戦いについて思考をまとめさせる。
第二試合は早々と終わった。
第三試合――瓦楽VS常闇。
「お次は、両者ともに瞬殺でのし上がってきた瓦楽VS常闇!!」
相手は常闇。黒影はその名の通り影だ。物理攻撃はそれ自体に意味はない。それに加えタイムロスなしで常闇はそれを出せる。
狙うなら常闇自身。懐さえ入ってしまえばいいが、一対一では難しい。
「スタート!!」
「黒影!」
「アイヨ!」
流石に予想通り。先手必勝を狙った常闇は、開始と共に黒影を出現させる。夜月は結界で防御をしつつ、常闇に近づこうと試し見る。
しかし、やはりそうやすやすと黒影は通してくれない。
「さすが、君は手ごわいね」
「俺にとっても同じことだ。お前は、下手をすれば爆豪や轟よりも強敵だと思っている」
「それは光栄だね」
試しに武器を具現化させ、黒影に向かって切り付けるが、武器は黒影の攻撃によって場外まで飛んでいく。これも予想通り。
黒影は影だ。騎馬戦で少し気づいたぐらいだが、影であるなら弱点は一つ。
「予想通り。なら、これはどう!」
「なにっ……!」
夜月は手を振り払った。瞬間、現れたのは夜月を囲むように現れた眩しい刃。いつも使っているあれが影、ならばこれは光。
光の刃を一斉に常闇へ向かって放つと、彼は防御に出た。だが光のためか、黒影は少し鈍る。
そこからできた隙。
夜月は片手に光の剣を握り、常闇へ突き進む。黒影がきても剣を持っていない片手に電撃を這わせ、撃退する。とうとう常闇にたどり着き、剣を振り払う。避けてできた不安定な体を床に押し付け、常闇に剣を向ける。
「影っていったら、弱点は光よね」
「くっ……」
常闇は剣で、黒影は這わせた電撃の光で動きを捕らえる。身動きが一切取れなくなった常闇は悔し気に「降参だ」と口を動かした。
「常闇くん行動不能! 瓦楽さん準決勝進出!」
勝者、夜月。
ワァァ、と歓声が響く。次は、準決勝。
第四試合――切島VS爆豪。
夜月は一休みをする気分で観客席には戻らず、通路を歩いていた。歩いていても観客の声やマイクの実況が微かに聞こえる。
流石に疲れたなぁ、なんて思う。
すると通路の曲がり角から人が出てきた。曲がろうとしていた夜月は急停止し、その人を見上げる。
その人は、エンデヴァーだった。
「あぁ……君か」
「その節はどうも」
夜月は軽く頭を下げた。
彼とは轟と会う前から知り合いだったのだ。知り合いと言っても、あの事件後に少し接点があっただけだが。
「……まさか、君が此処に入っているとは思わなかったぞ」
「……でしょうね。私も、驚きです」
会話は続かない。
エンデヴァーは夜月を一瞥すると横を通り過ぎる。もし、焦凍と当たったらしっかりと頼むと言い捨てて。
しかし、彼と戦うには彼はまず飯田に勝たなければならないし、自分も切島か爆豪どちらかに勝たなければならない。
夜月は通路から出る。試合はたった今終わり、勝者は爆豪。
次の試合相手は爆豪に決定した。
それを理解した夜月は密かに、口端をあげていた。