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Battling a villain


視界は開き、体には激痛が走った。


「っぁ――!!」


空中で開いたワープゲートから落とされ、地面に激突する。
強く体を打ち付けられ、咳き込みながら手をついて立ち上がった。

場所は広場だった。
相澤が敵を引き付けるために向かった場所。敵が現れた場所。

どうやら、此処に落とされたのは自分だけらしい。


「おい! こっちにガキがいるぜ!!」


その声に応じ、数人の敵が夜月を囲む。
囲んだ敵は全員、夜月を舐め切っている。自分らが負けるとは、塵ほども思っていない。


「こいつは楽勝だっ!!」


笑みを浮かべた敵、三人は同時に夜月へ飛び掛かった。
夜月は冷静にそれを見つめ、おもむろに片手をあげ、胸から腰へと振り下ろす。次の瞬間には、三人の敵は影でできた槍をもろに食らっていた。
突然現れた『それ』に、敵は動揺を露わにする。

三人を退けると夜月は残りの敵に向かって走り出した。
その両手はほのかに光を放ち、次には双剣が握られていた。


「なんだこのガキ!?」


一人がそんなことを言いながら、夜月を殴りかかる。
易々と夜月は避けた。


「あら、背中ががらあきよ」


敵の影から出てきた、大きな人の手。影でできたその手は敵を掴み、遠くへ投げつける。
一緒に残っていた何人かの人も道ずれに。
それでも敵は多く、まったく減らない。夜月は休むことなく、敵を倒していった。

一通り、自分の周りを綺麗に排除すると両手の双剣は跡形もなく消える。

さて、どうするか……と夜月が出入り口に目を向けると、再び敵はやってくる。
夜月は撃退しようと振り返るが、それをする前に相澤の捕縛武器が敵を捕らえ、飛ばされた。


「瓦楽! 何故ここにいる、避難は!」

「ワープゲートで何人かが散り散りになった、私もその一人」

「なるほど、な!」


背中を合わせ、敵を撃退していく。
相澤は長く戦い過ぎている、夜月も他のクラスメイトより何倍も敵を倒している。疲れが出始めていた。

すると、敵陣の中心にいた幾つもの手を体中につけた異様な男がこちらに向かって走り出した。


「下がっていろ!」

「っ了解!」


夜月はそう言われ、その男には近づかないように後退しつつ、襲ってい来る敵を撃退する。
初めは影でできた鎌を、後退した敵には投げナイフを。

あらゆるものを想像し、具現化する。それにも限界が来ていた。


「……っ!」


眩暈で体が崩れる。が、一瞬で立て直し、一回転をする引力に任せて鎌を振るう。
それにより、敵との距離は大いに取れた。

ふと、視界に相澤が映る。
相澤は男に掴まれ、掴まれた肘が崩れていった。早期に距離を取った相澤。
その後ろには、異様で大きな何か。その何かは相澤に向かって腕をあげていた。


「相澤さんっ!!」

「いかせないよ」


咄嗟に相澤のもとへ向かおうとするが、突如、視界の端に現れた男によってそれは阻止された。
夜月は距離を取るため、後ろへ下がる。
瞳には焦りを映し出し、相澤のほうを伺おうとする。


「お前が、先生の言ってた個性を二つ持ってるって奴か。先生が言ってた、お前とは仲良くなれるって」


敵は明らかに夜月を知っていた。
敵の第一目的がオールマイトであれば、第二目的は夜月だ。そう思わずにはいられない。


「『想像』と『言霊』。どっちも広範囲、生かすも殺すも簡単な個性だ!」


男はエンターテイナーのように両手を広げ、楽し気に言う。
それとは対照的に、夜月は瞳を歪ませ男を睨みつける。


「なぁ、聞かせろよ。言葉一つで人を殺すって、どんな気分?」


その言葉は夜月の逆鱗に触れた。
夜月は剣を握り、一瞬で間合いを詰める。目の前の男に剣を振り下ろすが、それは容易に掴まれる。そこから剣は朽ちていく。


「……っ! 崩壊?」


男は掴んだ剣と共に、夜月を払い捨てた。力には逆らえず、そのまま飛んでいく。
身体を地面に打ち付けられながらも立ち上がるが、男はすぐ目の前まで迫ってきている。


「けっか……!!」


『結界』と叫び、バリアを張ろうとするが男に口元を覆うように掴まれ、そのまま地面に叩きつけられる。
頭を打ち付けられ、割れそうになる。もともと個性の使い過ぎで頭痛はしていた。それを、さらに鈍器で殴られたようだ。

意識を何とか保ちながら、覆いかぶさる男を見る。


「何も考えられないぐらい痛みを与えて、口さえ覆えば、個性は使えないよね」


言う通りだ。
『想像』は頭を使う。考えられなくなれば終わり、言葉を発せなければ終わりだ。


「取り敢えず、寝てろよ」

「っあぁ――!!」


力強く腹を蹴られ、地面に蹲る。
手は離れ、男も離れていく。解放はされたが意識は朦朧で、喉から出るのは痛みに叫ぶ咳のみ。

広場にはボロボロになった相澤と夜月の体が横たわっていた。