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In the bus


午後、教室――ヒーロー基礎学の時間。


「今日のヒーロー基礎学だが…オールマイトそしてもう一人の三人体制で見ることになった」

「ハーイ! 何するんですか!」


授業が始まり、相澤が説明を始めると瀬呂が手を挙げて質問する
それに相澤は「RESCUE」と書かれたカードを取り出した。


「災害水難なんでもござれ、人命救助訓練だ!」

「レスキュー……今回も大変そうだな」

「バカおめー、これこそヒーローの本分だぜ!? 鳴るぜ!! 腕が!!」

「水難なら私の独壇場ケロケロ」

「おいまだ途中」


反応はそれぞれ。
しかし、ここで相澤が静かにしろと睨みをきかせるとさっと静かになる。


「今回のコスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるから、バスに乗っていく。以上、準備開始!」


相澤の合図とともに全員がバッと準備に取り掛かる。
着替えて外に出れば皆、期待と楽しみに胸を膨らませていた。

夜月のコスチュームはいたって普通、だから戦闘訓練と同じく完全装備。


「夜月、アンタ、もう少しチャック閉めたら?」


耳郎がポケットに手を入れて立っていた夜月に声をかけた。
チャックは胸下で止めている。中は黒のスポーツブラのみなので、微妙に素肌の腹が見え隠れしていた。


「んー、でもね耳郎。そうすると窮屈で……」

「まぁ、アンタがいいなら良いけどさ」

「そう?」


すると、飯田がスムーズに移動できるよう二列に並べと呼びかける。
向こうで峰田がこちらを向いて、親指を立てているのは無視した。

二列に並んでバスには乗ったが、バスの座席構成は飯田の予想と大きく異なり、二列に並んだ利益は得られなかった。

最後にバスに乗車した夜月。
席はほぼ埋まっている。


「瓦楽」


席を探している夜月に気付き、轟が声をかけた。
轟に目を移すと、彼は顎で自分の隣を指す。そこは空席だった。
座れ、という意味なのだろう。


「ん、ありがとう」

「あぁ」


轟の隣に腰を下ろせば、バスは発車する。

周りの人は友人とな話したり、自分の好きなことをしている。
夜月は持ってきた小説をポケットから出して、読書をはじめる。隣の轟は腕を組んで目をつむっている。


「俺の硬化は対人じゃ強ぇけどいかんせん地味なんだよなー」

「僕はかっこいいと思うよ。プロにも十分通用する"個性"だよ」


前方にいる人たちの会話を、本を読みながら聞き流す。


「派手で強ぇっつったら、やっぱ轟と爆豪だな。ものによったら瓦楽もか」


自分の名前を呼ばれ、夜月は本から顔をあげる。
と、ここで蛙吹の的確な発言。


「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ」

「んだとコラ出すわ!!」

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格だと認識されるってすげぇよ」


上鳴の発言。
妙な言い回しだが、合ってはいる。


「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」


そんな様子を本を片手に眺める。
すると、たまたま爆豪と視線が交わり、怒号を放たれる。


「なに見てんだ銀髪女!!」

「……理不尽」


そんなことを呟いた直後だった。
一方の肩に重みが乗り、なんだと隣に目を移すと眠った轟が夜月の肩に頭を載せていた。バスの揺れのせいだろうか。


「あれ? 轟寝ちゃった?」

「みたいだね」


瀬呂の言葉で近くにいた数名の人から視線を受ける。
夜月は仕方ないと息を吐き、轟を起こす。


「轟、重いよ」

「ん……あぁ、悪ぃ」


一、二度揺らせば起きる轟。
そして再び、寄りかかる前の体制に戻る。


「二人って、中学からそんななの?」

「いや。どちらかというとそうでもないよ。でもまぁ、一緒にいる時間も長いし、自然とこうなるんじゃない?」

「(それって他意はないんだよな……?!)」


言葉を使わずとも相手の意思を読み取ったりと、様々な行動を見ていた瀬呂は心の中でそう叫んだ。


「もう着くぞ、いい加減にしとけよ……」


その後、相澤の言葉により前方の騒ぎは終息。
とうとう目的地に着いたのである。