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Chairman


翌日。
登校をすれば、学校の門にはマイクやカメラを持ったマスコミの人だかり。うじゃうじゃといて、迷惑この上ない。
此処を避けたいものだが入り口は一つ。通るしかない。

遠くから眺めていれば、生徒たちはマスコミに問いかけられながら頑張って門を通過している。
面倒くさがりの夜月は露骨に息を吐きだす。


「どうかしたのか、瓦楽」

「あぁ、常闇」


振り返れば、たった今登校していた常闇がいた。
常闇の視線は、夜月の背後にいるマスコミに移る。


「……なるほど、マスコミか」

「あれを通過するのは億劫だなあ・・・・・・」

「お前の個性なら行けるんじゃないのか?」

「昨日一昨日と使い過ぎてね、反動が来てるからあまりね」


常闇は「それならば仕方ないな」と納得する。

通過しなければ遅刻になってしまう。
どうしようかと悩んでいる夜月。常闇はそんな彼女の腕をつかみ、校門へと向かっていく。


「え、ちょ、常闇?」


困惑する夜月。
基本的力もなく、身体能力の低い夜月にはなすすべがない。

どんどんマスコミに近づいていくため、もちろん彼らはそれに気づき、標的を変えてくる。


「あ、そこの君たち! オールマイトについて……」

「悪いが応える気はない。通らせてもらう」


マスコミの問いに被せ、常闇が言ってやる。
そのままマスコミを掻き分け、とうとう校門を通り過ぎた。

夜月は常闇の後ろを付いてきただけなので、それほど人にもまれることはなかった。


「大丈夫だったか、瓦楽」

「えぇ。ありがとう、常闇、助かったわ」

「礼には及ばん」


クールな返しだ。
二人はそのまま校舎に入り、教室へ向かった。





――教室。


「HRの本題、急で悪いが今日君らに……」


そこで切られた言葉に、教室内がザワつく。
臨時のテストでも行われるのではないかと、数人は不安に駆られる。そして、ために溜めて相澤が口を開いた。


「学級委員長をきめてもらう」

「「学校っぽいの来たー!!」」


先程までの不安はどこへやら、皆一様に前のめりで立候補。

普通科ならなんともないこの行事、しかし、ヒーロー科の生徒にとっては重要な行事。全員がこの枠を狙ってくる。
なんといっても、率いるリーダーになれるのだから。


「委員長!!やりたいですそれ俺!!」

「おいらのマニュフェストは女子全員膝上30センチ!!」


あちこちから、上がる声に教室中が包まれる。
しかし、その中で一人夜月は頬ずらをして眺めていた。収集のつかないこの状況、飯田の一言で1度落ち着きを取り戻す。


「多を牽引する責任重大な仕事だぞ! やりたい者がやれるものではないだろう!! 周囲からの信頼あってこそ勤まる聖務! 民主主義に則りそのリーダーをみんなで決めると言うなら……これは投票で決めるべき議案!!」

「そびえ立ってんじゃねーか! 何故発案した!!」


上鳴の言う通り、彼の手はしっかりと聳え立っている。
彼の言い分では、まだ日も浅いこのクラスでこの時点で複数票貰えるものが真に相応しい学級委員長だと言う。


「賛成」

「瓦楽流されんな!」

「いや、普通投票じゃない?」


早々と飯田が相澤に許可を取る。
不満の声を複数聞きながら、結果投票制に落ち着く。


「……誰に入れようかなあ」

「俺!! 俺に入れてくれよ!!」

「それじゃあ、上鳴以外の人で」

「瓦楽!?」


上鳴の言葉を流し、シャーペンを走らせる。
数分して、全員の表が集まって遂に開票。


「僕、三票!?」

「なんで、デクに……! 誰が……!」


気に入らないのか、爆豪はそう言って辺りを見渡す。
そして次いで二票が八百万。


「一票!? そんな、誰が一体……!!」

「自分で入れたんじゃねぇのかよ」


ふるふると震え立つ飯田。それに切島が突っ込みを入れる。
0票は数名。そのうちの誰かである。


「瓦楽とかじゃねぇの?」

「そうなのか瓦楽くんっ!!」


0票の夜月を見つけた切島がそう言い、飯田が反応する。


「いや、言ったら投票の意味がないよ」

「はっ! しまった!!」


委員長は緑谷、副員長は八百万。
委員長決めは、数分により終了した。