それから、ヒルメスは何かとスーリを気に掛けるようになった。
毎日ではないにしろ、ちょくちょくとスーリの部屋へヒルメスは尋ねに言った。
そんなある日、ヒルメスはいつもの会話のように「まだ三つだから」と言ったその時、スーリはもう四つになったと言った。
いつの間にか、知らぬうちにスーリは一つ歳を取ったらしい。
そういうヒルメスもまた、一つ歳をとっていた。
その事実を告げられた時、ヒルメスは何故言わなかったと問い詰めたが、考えてみればいちいち報告する義務もないのだ。
それでもヒルメスは少しばかり、不満だった。
四つになったことを知ると、ヒルメスはせっかくだから何か贈ろうと考えた。
スーリが好きなものを考えていくが、一番はやはり本だ。しかし、それでは味気ない。
そう思い考えるが、学ぶことが好きなスーリは大抵なんでも喜ぶ。知らないものであればなおさらだ。
いろいろと思案していると、ふとスーリの外見にとまった。
スーリの顔立ちは大人びていて、とても美しい。ドレスもそれに見合ったものだ。だが、そういえば装飾品がみられない。
大抵、王族貴族は宝石やらやたら豪華なもので着飾るが、スーリはそういったものを付けていなかった。
そこでヒルメスはスーリにアクセサリーを贈ることにした。
さて、アクセサリーにしても何を贈ろうか。
首飾りや腕輪、指輪、耳飾り、髪飾り。いろいろな種類がある。
そして色なども大切になってくる。
長い間考えた結果、贈ることにしたのは耳飾りだった。
そして次は色だ。
最初、ヒルメスは瞳と同じ紫と考えたが、ドレスと同じ色ではつまらない。
すると、紫に合う色を考え、無難に金と決めた。
決めればあとは早い。
早々と買いに行き、スーリに贈ろうとヒルメスは足早になった。
「これは……?」
「いいから開けてみろ」
ヒルメスは目当てのものを手に入れると、さっそくスーリに贈った。
上品な箱を渡されたスーリは、不思議そうに首を傾げた。
ヒルメスに言われた通り箱を開けてみると、そこには上品な金色の耳飾りが入っていた。
色だけ見れば派手だが、宝石の飾りはなく、シンプルでいいものだった。掘られた模様がまた味を出していて良い。
「四つになったのだろう? 大したものではないが、贈り物だ」
スーリは嬉しそうに耳飾りを見ては微笑む。
スーリの姿を見て、ヒルメスも嬉しく感じ微笑する。
「嬉しいです、ヒルメス様。この贈り物も、私のことを気にかけてくれたことも、全部、嬉しいです!」
スーリがパルスに来て、こんなにも満面な笑みをしたのは多分、これが初めてであろう。
ヒルメスはそれを見て目を瞬かせ、よかったと嬉しそうに笑い返した。
「お主が喜んでくれて、何よりだ」
そう言って、ヒルメスはスーリの頭を撫でた。
「ヒルメス様、もし、よければ……」
スーリは途中で言葉を切ってしまった。
すると恥ずかしそうにもじもじとする。
「なんだ? 言ってみろ」
「もし、よければ……『お兄様』と呼んでもいいでしょうか?」
それにヒルメスは驚く。
スーリは続けて言う。自分には兄弟がいなく、兄のような人もいない。その中で唯一、ヒルメスが自分を気にかけてくれたと。
そう言われてしまえば、ヒルメスも断れない。
しかし、ヒルメスも自分を兄として慕おうとするスーリに嬉しく思い、快くそれを受け入れた。
「あぁ。お主の好きにするがいい」
「はい、兄さま!」
その日から毎日のように、ヒルメスはスーリのもとに通うようになった。
きっと、この出来事が、もしくはそれ以前からヒルメスはスーリのことが好きだったのだろう。
そして同じくスーリも、ヒルメスのことが好きになった。
それを自覚するのはもう少し後だが、とある王子と姫君は確かに――恋をしていたのだった。
とある王子と姫君の出会い End.