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とある王子と姫君の出会いV




それから、ヒルメスは何かとスーリを気に掛けるようになった。
毎日ではないにしろ、ちょくちょくとスーリの部屋へヒルメスは尋ねに言った。


そんなある日、ヒルメスはいつもの会話のように「まだ三つだから」と言ったその時、スーリはもう四つになったと言った。
いつの間にか、知らぬうちにスーリは一つ歳を取ったらしい。
そういうヒルメスもまた、一つ歳をとっていた。

その事実を告げられた時、ヒルメスは何故言わなかったと問い詰めたが、考えてみればいちいち報告する義務もないのだ。
それでもヒルメスは少しばかり、不満だった。


四つになったことを知ると、ヒルメスはせっかくだから何か贈ろうと考えた。

スーリが好きなものを考えていくが、一番はやはり本だ。しかし、それでは味気ない。
そう思い考えるが、学ぶことが好きなスーリは大抵なんでも喜ぶ。知らないものであればなおさらだ。

いろいろと思案していると、ふとスーリの外見にとまった。
スーリの顔立ちは大人びていて、とても美しい。ドレスもそれに見合ったものだ。だが、そういえば装飾品がみられない。

大抵、王族貴族は宝石やらやたら豪華なもので着飾るが、スーリはそういったものを付けていなかった。

そこでヒルメスはスーリにアクセサリーを贈ることにした。


さて、アクセサリーにしても何を贈ろうか。

首飾りや腕輪、指輪、耳飾り、髪飾り。いろいろな種類がある。
そして色なども大切になってくる。

長い間考えた結果、贈ることにしたのは耳飾りだった。
そして次は色だ。

最初、ヒルメスは瞳と同じ紫と考えたが、ドレスと同じ色ではつまらない。
すると、紫に合う色を考え、無難に金と決めた。

決めればあとは早い。
早々と買いに行き、スーリに贈ろうとヒルメスは足早になった。





「これは……?」

「いいから開けてみろ」


ヒルメスは目当てのものを手に入れると、さっそくスーリに贈った。
上品な箱を渡されたスーリは、不思議そうに首を傾げた。

ヒルメスに言われた通り箱を開けてみると、そこには上品な金色の耳飾りが入っていた。
色だけ見れば派手だが、宝石の飾りはなく、シンプルでいいものだった。掘られた模様がまた味を出していて良い。


「四つになったのだろう? 大したものではないが、贈り物だ」


スーリは嬉しそうに耳飾りを見ては微笑む。
スーリの姿を見て、ヒルメスも嬉しく感じ微笑する。


「嬉しいです、ヒルメス様。この贈り物も、私のことを気にかけてくれたことも、全部、嬉しいです!」


スーリがパルスに来て、こんなにも満面な笑みをしたのは多分、これが初めてであろう。
ヒルメスはそれを見て目を瞬かせ、よかったと嬉しそうに笑い返した。


「お主が喜んでくれて、何よりだ」


そう言って、ヒルメスはスーリの頭を撫でた。


「ヒルメス様、もし、よければ……」


スーリは途中で言葉を切ってしまった。
すると恥ずかしそうにもじもじとする。


「なんだ? 言ってみろ」

「もし、よければ……『お兄様』と呼んでもいいでしょうか?」


それにヒルメスは驚く。
スーリは続けて言う。自分には兄弟がいなく、兄のような人もいない。その中で唯一、ヒルメスが自分を気にかけてくれたと。

そう言われてしまえば、ヒルメスも断れない。
しかし、ヒルメスも自分を兄として慕おうとするスーリに嬉しく思い、快くそれを受け入れた。


「あぁ。お主の好きにするがいい」

「はい、兄さま!」



その日から毎日のように、ヒルメスはスーリのもとに通うようになった。

きっと、この出来事が、もしくはそれ以前からヒルメスはスーリのことが好きだったのだろう。
そして同じくスーリも、ヒルメスのことが好きになった。

それを自覚するのはもう少し後だが、とある王子と姫君は確かに――恋をしていたのだった。


とある王子と姫君の出会い End.


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