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暖かい話


まだ12月初旬だと言うのに、最近は1月並みの寒さが続いている。ハーッと息で手を暖めて、両手を擦る。一瞬だけ暖かくなったが、すぐに冷気に負けて冷たくなってしまった。
こんな寒さだというのに、豹徒は今日もいつも通りの格好で元気に公園内を駆け回っている。足は足袋を履いてはいるが薄っぺらい草履だし、マフラーも手袋もしてないし、羽織も暖かそうには見えない。見ているこっちが寒くなりそうだ。
それでも駆け回っているうちに体温は上昇していくらしく、豹徒自身は寒さを感じているようには見えない。
ふと元気にぴょこぴょこと跳ね回っていた豹徒がこちらへとやってきて、ちょっと休憩。と隣へと座った。汗はかいていないが暑そうだ。

「なんだよ」

じぃと見つめていると、怪訝そうな顔をして豹徒が聞いてきた。

「いやぁ、暖かそうだと思ってな」
「っ!」

言いながら、暖をとろうと首へと手を伸ばす。しかし伸ばした手を豹徒の手に叩きおとされた事によって、首に触れる事は叶わなかった。

「首はやめろ」

こちらを睨みつけながら言うも、その目には少しではすまない程の怯えが見えた。首に関することでよほど怖い目にあったことがあるらしい。
やっちまったなぁ……。
豹徒は苦虫を噛み潰したような顔をして、握りしめた拳を小さく震わせている。知らなかったとは言え、かなり酷いことをしてしまったと罪悪感が湧いた。
どうするかと迷ってから、そろりと手を伸ばして、まだ震えている豹徒の手の片方を握りしめた。

「つめてっ!?」

お互いの手の温度差に驚いて、豹徒が手を引っ込めようとしたがそれぐらいで振り払われる程やわじゃない。そのまま握りしめていると、観念したのか抵抗はしなくなった。

「悪かったな」
「……別に、いいよ。俺もぬくいしな!」

さっきの事と、手の冷たさと、いきなり手を握った事と。色々な意味を込めて一言謝る。
豹徒はそれを汲み取ってか、一つの意味だけを取ってか、顔を背けながらぽそりと呟いた。すぐにそれをかきけすように多少大きな声で付け足したが。
寒さでは説明できない程の赤さで耳を染めながら言うものだから、可愛くて可愛くてバレないように笑みをこぼした。

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