「ふわ、ぁ……」 『カルラ、おはようさん。この寮のシンボルたる蛇 を邪険に扱うということは、あいつらの喉を掻っ切っても許されるよな?』 『許されないからやめなさい』
誰にも聞かれていないことを確認してから窘める。殺したいのは同意するが、本当に殺すのはだめだ。ミケと離れ離れになってしまう。
そろそろ部屋での居場所がなくなりそうなので、寮監たるスネイプ教授に相談しに行こうと思っている。ダンブルドアには、相談したところで「セブルスの決定次第じゃな」とあしらわれる可能性が高い。彼は好好爺だ。十分あり得る。まあ、ミケを連れてもいいという許可をもらうために、いずれ訪問せねばならないが。
「今日の授業は……」
もらった時間割を見ると、一、二限目は魔法史だった。たしか眠くなることに定評のある授業だ。うっかり眠らないようにミケに起こしてもらわなくては。 担当はビンズ先生のはずだが、そのほかの情報はない。特定の未来を予知できないのはこういう時に不便だ。
魔法史の教室を探すために、同室の女子を置いてさっさと大広間で朝食をとる。昔の抜け道があるか否かの確認をするために、来週の日曜日は探険するつもりだ。フレッドとジョージあたりにお願いしたらいいのではないかと思っているが、スリザリンの私の依頼を引き受けてくれるかどうか。
教室を探して10分ほど経ったとき、寮付きゴーストの血みどろ男爵と遭遇した。数百年前と一切変わらぬ風貌の彼に淑女の礼をして、魔法史の教室がどこか尋ねる。彼は親切にも連れて行ってくれると申し出てくれたので、厚意に甘えることにした。
「ここだ。……私を見て怯えないとは珍しい」 「ありがとうございます。……私があなたを怖がる理由がありませんでしたので」 「……そうか」
私はあなたに殺されたのではない。そして私は殺人者に怯えるものではない。故に私はあなたを恐れない。 それを伝えると、彼は珍妙なものを見たような顔をして去って行った。
教室に入って、ちょうど空いていたマルフォイの横に座る。早く来たつもりだったが、ちらほら生徒がいるので迷っていた10分は大きかったらしい。 マルフォイにはすごく嫌そうな顔をされた。
「……なんのつもりだ」 「寝たら起こしてやろうと思ってな」 「どういうことだよ」
授業が始まれば分かる、とは言わず、そのまま予習を始めた。舌打ちした彼も隣で予習を始めたのだろうか、頁をめくる音がした。
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