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※バレー部マネージャー・冥地菜舞
 澤村たちと同級生。ただいま2年生。




県立烏野高校バレーボール部の朝は早い。
学業開始前の朝練は、朝が苦手な者にとって苦痛なのであった。


Pipipipipipipi......

目覚まし時計が鳴っていた。部屋の主は布団の中でもぞもぞと動くばかりで、目覚める気配はない。
菜舞は体を起こすことなく、手を伸ばす。カーテンの隙間から朝日が零れ落ち、室内の埃がキラキラ光る。
手に目覚まし時計が当たり、その頂点のボタンを押す。すると、目覚めの時間を知らせるやかましい音は止んだ。
彼女は手を引っ込め、布団の中にうずくまる。心地よい微睡(まどろみ)に沈む。温かい布団に包まれ、頬は優しい光に照らされている。

Rurururururu.......

電話だ。朝っぱらから誰だ。
昨日の夜、携帯でSNSを見て寝たので、枕元でけたたましい音が鳴る。騒がしい。
菜舞は携帯を手に取り、目を開ける。

菅原孝支

同級生の菅原である。
通話ボタンを押した。

『おはよう、菜舞』
「…おは」
『毎日反省しないな、起きなきゃ遅刻だべ』
「……もうちょっと、」
『ダーメ!30分後迎えに行くから!菜舞が朝練来てくれないと、バカ2人のモチベーションが違うんだ』
「えぇえー… 清子が朝練来ないし、私のモチベーションは上がんないよ…」
『今日は清水来るって言ってたぞ』
「行くわ。今起きた。すぐ準備する」
『待ってるな』

通話を切って、菜舞は起き上がる。急いで準備しなければ。
さっと髪を(くし)()き、パジャマから制服に着替える。昨晩、部活用のジャージなどは準備している。後は朝ごはんを食べて歯磨きして髪を整えないと!結構時間ない!!


--After 29 min.....


「おはよー、さっきぶり」
「…おはよう、菅原」

菜舞はチャイムが鳴ったため、家の玄関に出る。もちろん押したのは菅原だ。満面の笑みである。

「さ、行くべー」

菅原が歩き出す。菜舞はついていく。30分で急いで準備し、もう疲れた。
だけど、体育館に行けば清水が待っている。

「電話来て驚いたよ」
「どうしても朝練来てほしくてさー」
「あのバカ後輩2人のため?」
「ほんとギリギリに来るんだよなー、あの2人。田中は普通に寝坊しかけてるんだけど、西谷がなー」
「西谷が?」

田中も西谷も今年、烏野高校に入学し、バレー部に入部した1年生である。何人かいる内の1年生で問題(?)が多い。存在が嵐のように、ふるまいが周りに影響を与える。
東峰なんて、西谷にダメージ喰らいまくっている。精神的に。

「あいつ、朝ご飯と髪セットのせいで遅刻しかけてるって言うんだ」
「身長10cm詐欺ヘアーセットに時間かけてるんだね」
「大変そうだべ」
「そういうところが可愛いよねー、性格的には身長なんて気にしないように見えるのに」
「可愛い?」
「ギャップっていうのかな?そういうのに女の子は弱いんだよ」
「へぇ〜」

菅原が顎に手を当て考え込む。菜舞は、訳が分からず菅原の顔を覗き込む。

「どうしたの?」
「え、いや!なんでもない!」
「でも、何でもないって顔してないよ?凄い真剣だった、」

「そこに!」
「いるのは!」
「「菜舞さんじゃないですかー!?」」

後ろから西谷と田中の声がする。ドドドドと走ってくる音もするので間違いない。
菅原と菜舞が振り返る。

「オハヨーゴザイマス!菜舞さん!」
「本日も麗しく!」
「あ、スガさんもおはようございます!」
「おはようございます!!」
「オレはついでかよ…」
「おはよう、バカ2人」
「菜舞さんに(ののし)られた…!」
「今日はいい1日になりそうだ…!」

バカ後輩2人が、菅原と菜舞に追いつき、横に並ぶ。
爽やかな朝の風が、道端の草を揺らす。緑は朝日に照らされて、輝いている。
菜舞はふと疑問を感じた。

「あれ、この2人っていつも遅刻ギリギリじゃなかったっけ」
「まだ余裕ッスよ!」
「あと5分もあります!」
「うわ、あと5分しかない!」

菅原が自身の腕につけた時計で時刻を確認した。
マネージャーは朝練に来なくてもいいので、菜舞は気にしたことなかったが、5分前というのはそんなにヤバいのだろうか。

「そんなに時間ない?」
「だって、今から坂を上って部室行って着替えてってしてたら、5分じゃ足りないよ!」

珍しく菅原が焦っていて、菜舞は少し意外だった。

「菜舞さん!体育館で待ってますね!」
「オレら、先に行ってます!」

では!なんて言いながら、田中と西谷が駆けていく。朝から元気なことだ。

「ごめん、オレも先に行く!菜舞はゆっくり歩いてきて!」
「あ、うん」

菅原が片手を挙げ、申し訳なさそうに駆けていく。2人と違って、元気というより無駄なく走っていくという印象だ。
菜舞は走って登校するという気が1mm(いちみり)もないので、呆れた顔で見送る。

「ていうか、菅原、可愛いな」

もっと計画性持って行動しているのかと思っていたから、朝練遅刻気味だなんて思わなかった。
菜舞を迎えに行っていたから、遅刻ギリギリだなんて、彼女は夢にも思ってない。



@朝練始まる直前

東「スガー、どうしたんだ?時間ギリギリで」
田「そういやそうッスね、オレ達はいつもの時間でしたけど」
西「菜舞さんと一緒だったッスね!いつもなら菜舞さん、朝練に来ないのに!」
澤「お?ついに手ぇ出すのか?」
菅「手ぇ出すって何だよ!」
東「ついにかぁ、長かったなぁ」
菅「そんな遠い目すんなよ!旭!」
田西「「???」」





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