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6月下旬。梅雨も本番になって毎日のように雨が降る。髪がごわごわするから雨は嫌いだけど、雨の音は好きだ。しとしと、ざあざあ、ぱらぱら。色々な表情を持っていて、聞いていると、思考に集中できる。

ツッキーは今まで以上に部活に精を出している。

私とツッキーが付き合い始めて2ヶ月と少し。4月当初と変わった所は、ツッキーとアド交換をしたことだけだ。私は何を送っていいか解らずに、アドレス確認した時に"よろしくねー"としか、ツッキーと未だメールしてない。つまり、全然恋人らしいことをしてない。
本当にそれでいいのだろうか……最近そう考える。
いや、別に雨降ってるからツッキーのこと考えてるんじゃなくて、だって、席も隣だし、他の人よりは恵まれているかもしれないけどさ。付き合う前と関係が変わってない気がするもん。いやマジで。
ツッキーってあんまり表情が変わらないから、解りにくいけど、バレーボールが好きなんだなって解る。私が言うんだから間違いない。そんな彼が頑張って部活をしているんだから、応援しなくてどうする。
平日はもちろん土日も部活をしているんだから、デートなんてする暇はない。私は暇なんだけど。男バレのマネさんになろうかな、とも思ったけど、もうすぐIH予選があるようなこのタイミングでの入部は迷惑だろうと思う。私は一応バレーの知識があるけど、マネージャーはしたことないからね。仕事できない人間が体育館をうろちょろしたら、練習に集中できないだろう。

「…何かドツボにハマっていってる気がする」
「何それ。寂しいから構って下さいって月島君にお願いすれば」
「ブッ!ちょ、無理、無理!!」
「もうっ!菜舞汚い!」

ミカには付き合って1日でバレた。1日というか、ソッコーで。どうやって言おうか悩んでたから、それはそれでよかったんだけど。
ツッキーとグッチと体育館に行ったお昼休み。5限目が始まる3分前に帰って来た私達を見て、"ふーん、そういうことか"と爆弾発言。教室はざわざわしていたが、私もツッキーも顔が赤くなる。ななな、何がそういうことなんだ!
「いや、だから付き合い始めたんでしょ?解りやすいったらありゃしない」……ミカさん、あんた鋭すぎるよ。

「ツッキーってさ、冷えてるように見えて、凄い一生懸命なんだよ」
「はい、惚気頂きましたー」
「惚気じゃない!」
「それで?」
「…頑張ってるツッキーの邪魔したくないからさ、デートとか誘えなくて」
「デートじゃなくてもいいんじゃない?」
「え?」
「一緒に家に帰るとか、差し入れをあげるとか、もっと色々あるでしょ」
「オーナルホド」

その発想、全然なかったわ。
ミカ、もしかして百戦錬磨なの?

「多分菜舞よりは付き合った回数多いし」
「え、今フリーだよね?」
「なわけないじゃない。彼氏持ち(カ・レ・シ・モ・チ)♪」

なん…だと!!?
ミカとは高校入ってからの付き合いだけど、全然気付かなかったんだけど!何で私に教えてくれなかったんだ!

「別に聞かれなかったし、ちょっと恥ずかしかったし」
「何よそれ…。彼氏って他校?」
「うん。同中(おなちゅう)なの」
「へーふーん…じゃあ、あんまり逢えないから、差し入れとかしてるの?」
「練習試合とかね、彼、バスケしてるから」
「おお、そういうことか」
「菜舞は月島君と席が隣なんだから、いつでも練習試合とかの日程聞けるでしょ」
「多分もう練習試合はないかな。すぐIH予選だって言ってた」
「じゃあ、その日、応援行けばいいじゃん」
「………ミカさん、お願いが、あるんですが」
「はいはい。ついって行ってあげますよ、ジュース1本ね」
「解りました!ジュースでよいのなら何本でも!!!!」
「え?そんなに奢ってくれるの?」
「いや無理です、調子乗ってすいません」

ということで、IH予選の応援に行こうと思います。


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