07:誰が悪いって言い放てる理由が欲しかった

苗字名前という奴がいる
初めて会うたのは、俺自身が霊術院生時代やった頃、
姉ちゃんの後ろに隠れてるような甘えた女の子やった
ずっと"ねぇね"と姉に話しかけててずっと歌?の傍を離れんかった
やはり寂しいんやろうな、というのが伝わった
まァあいつ自身はそない覚えてないやろうけど、





首席を共に争った同期である苗字歌?が死んで真っ先に思い出したのが妹の存在やった、
七番隊に集まる隊長・副隊長たち、あいつの亡骸を見つめる当時幼かった妹は霊術院時代から打って変わって随分大人びてた
随分と他人行儀に振る舞うその様は痛々しい

"私だったら死ななかった"

"弱いから歌匡は死んだ"

"弱い人に興味はない"

まるで自分に言い聞かせるように呟くその様は彼女なりの強がりやったんだろうな、と
唯一、彼女の本心の言葉は "馬鹿な女" と吐き捨てた言葉やった

そうやなァ、と声を掛けられたらどれくらい良かったんやろうか
なんやねん、平和の為に死神になった言うてたくせに旦那の喧嘩に巻き込まれて死ぬて
何、変な男に引っかかってんねん、アホちゃうか
俺かてそれ言いたかったけど言えへんかったんは誰よりも辛いであろう妹である名前が大人な対応をするからやった




「入隊試験に満点、霊術院史上初めての飛び級だってさ、」

それから瞬くして噂に広まった話はあまり興味がなかった

「まさか君と歌?ちゃんの得点を上回るとはねぇ」

「そら、満点ちゃうねんからいずれは越されてまうやろ、」

「今回、満点を取ったのは五大貴族の志波海燕と流魂街出身の女の子なんだってさ」

「末恐ろしい若手が出てきてんやなァ」

「その流魂街出身の女の子は歌?ちゃんの妹の苗字名前ちゃんだ」

驚きよりも、何となく腑に落ちた気がしたんは薄々歌?の亡骸を見た時の名前の言葉を聞いとったからやと思う
それから2年後、二番隊に入隊しそれから5年後に七番隊副隊長と出世道を突き進む名前は護廷十三隊中の噂の的やった
そんでもって久々の対面である隊首会、7年ぶりに副隊長を持つ羅武の顔は気が重そうやった

「なんやねん、お祭り騒ぎやで?」

「あんまり期待しないでくれって昨日言われてよ、」

「はァ?」

「"正直護廷十三隊とかどうでもいい、自分の知りたい答えがここにあるかと思って護廷に入ったし七番隊の副隊長にもなった"って」

ったく思春期の娘は大変だぜ、と言う羅武はちょォとやつれたようにも見えた

"このような大役を仰せつかり、気を引き締めて精進する所存でございます"

何取ってつけたような優等生の発言しとんねん、ホンマに優等生なりたいんやったら棒読みするなや、など見ててもどかしい気持ちやった

実際の副隊長の業務を見とっても仕事は出来る、しゃァけど機械のような名前を見たら痛々しかった
そして同時に名前の時間は歌?が死んだ時から止まったままなんやと気付かされた

余計なお節介かもしれへんけど同期の妹や、との気持ちや
自分でも正直なんでこんなに気にかかるのかは分からへん、
最初こそ釣れない対応やったものの、話しかけ続けてたら徐々に話すようになるあたり本人の警戒心が強いだけでホンマは寂しいんやろうな、と分かってきた










「何とかしてよ、」

羅武や挙西、ローズといった隊長面子で飲んでる時の話、

「昔みてぇに笑ってくれるようになるといいんだけどな、」

それは恐らく歌?が護廷十三隊に入隊した時に、連れてきた頃の記憶のことを言ってるのやなと直ぐに分かった

「ホンマにそんな簡単なことが難儀なんやからなァ、」

酒を煽るようにして吐いた言葉は空に消えた