01:今あなたと目が合うと泣いてしまうのかな
別れは突然だった
別にいずれは訪れる日が来るとも理解はしていた
「名前ちゃん、すまない」
『…………』
皆と同じ白い羽織の上に煌びやかな衣装を纏った姉の旦那の同期が直々に謝罪をする
思えば、姉が護廷十三隊に入隊してしばらくした後に1度会った事がある気がする
言わゆるお偉いさんと呼ばれる人が謝罪することが、嫌でも姉の死が現実だと教える
姉とは馬が合う訳でも仲が睦まじくもなかった
たった1人の肉親といつか彼女が言ってた言葉だけが私たちを繋げてた
勝手に私を大切な存在と表現し、勝手に姉は「平和な世界」を願い、勝手に死神になり、勝手に死んだ
死神になってからは会う機会がめっきり減り、死んだ後に結婚をしていたことを知った
誰よりも平和を願った姉は、人を愛してた姉は、自分の身分を隠してまで結婚した旦那に殺されたと死神に言われた
涙なんて出てこなかった
ただただ姉を見ることしか出来ない
"七番隊に所属をしていて副隊長という地位に就いていた"
"部下に慕われていた"
"誰にでも優しくて強くて美しい女性だった"
姉の"仲間達"が語る苗字歌匡とは一体誰なのだろう
姉は何の為に死神になったのか
愛する人に殺されても幸せと言えるのだろうか
「馬鹿な女、」
思わず出た言葉に周りが凍りつくのが分かる
「私は帰りますので好きに葬儀を挙げてください、強いて望みがあるとすれば姉には流魂街の民の1人に親友がいたみたいですので彼は葬儀に呼んであげると姉も喜ぶと思いますよ」
出てくる言葉はまるで他人事だ
悲しくなんてない、
別に、何とも思わない
「名前ちゃんが出なきゃ歌匡ちゃんも寂しいんじゃない?」
「私だったら死ななかった、弱いから歌匡は死んだ、弱い人に興味はない」
無機質に呟いた言葉がやけに七番隊舎の中で響いた
やるせなさをどうにかしたかった
今までなりたいと思わなかったのに私は霊術院の試験を受けてた
歴代最高得点での合格、と言われてもいまいち実感しない
新しい門出の日なのに、今日の空は雨模様だった