02:幸せすぎて映す悲しい空を観てた

「おい!お前俺より後輩だろ?ったく俺の言うこときちんと聞けよな、何しろ俺は先輩なんだからな!」

目の前の銀髪の天パに一瞥をして松陽先生を見れば彼はにっこりと微笑みかけてきた。

『……先輩も後輩もそもそも1週間違いでしょ?それに2人しか塾生いないじゃない』

「てめっ、生意気言ってんじゃねーよ!」

第一印象は頭が悪そう。

「何なの?お前、全部声に出てるんですけど!泣いていい?ねぇ、泣いていい?」

随分と想像しくて、

「ってか松陽、こいつ誰だよ?」

「名を知りたいのであれば自分から名乗るものですよ、銀時」

「てめっ、言うんじゃねーよ!」

彼とは会って間もないけれども松陽先生が好きなのだということがよく伝わる。

『苗字名前』

松陽先生と言い合ってる奴に自分の名を名乗る。

『あんたの名前は?』













『ちょっと、銀時!あんたいい加減にしなさいよ!掃除さぼってんじゃないわよ!』

「ガミガミうるせんだよ!うんこ女!てめっ、あれしてやっただろ!この前布団干してやっただろうが!あれでチャラでいいだろーが!」

『何言ってんのよ!あんたがあの後昼寝なんかするからかえって二度手間になったの忘れたの!』

「諦めんな!また晴れる日が来るさ!」

二人で言い合いをしてるとクスクス笑い声が聞こえる。

「本当に二人は仲がいいですね」

「何言ってやがる、松陽!俺は日頃苛められてんの!こんなヒステリー女、ヴっ」

股間を思い切り蹴りあげて最後の廊下拭きを終える。

『先生、以前より綺麗になりましたかね?』

「えぇ、銀時の掃除はただただ汚れていく一方だったのに比べて見違える程綺麗になりました」

「おい、聞こえてんだよ!」

ぶつぶつ銀時が悪態垂れてるのを横目に1週間かけて掃除した学舎で寝転がる。横に銀時も寝転がるのが見えた。

「君たちにはこれから学術と剣術を学んでもらいます」

「んな、学なんてなくたって生きてけるだろーが」

「この御時世ですからね、もし君たちの大事なものを守るときに必要になるかもしれません。今、私が持ってる全てを君たちに捧げましょう」

『先生は尊皇攘夷派なんですか?』

「わかりません」

起き上がり、あっけらかんとにっこり微笑むその人を凝視する。

「私にとって尊皇攘夷派とか幕府側とかそんなのはどうでも良いのです。君たちを傷付ける人たちをやっつける派とでもいいましょうかね」

第一印象は太陽みたいな人、掴めるようで掴めない、近くにいるようで遠くにいる、

『じゃあ私も先生を傷付ける人たちをやっつける派ってしとこうかな』

「松陽がやっつけられる?そんなの軍艦いくつあっても足り、ヴっ!」

ものすごい勢いで床に沈む銀時を見る。

「君たちに木刀を与えましょう」

「何か模様書いてあっけどなんだこりゃ?」

『洞爺湖って書いてあるのよ』

「こんなんじゃ何も斬れねぇぜ?」

「えぇ、君たちには斬り合いをしてもらうのではなくて切磋琢磨して鍛練してもらいますから」

『剣術…ねぇ』

精々扱ってきた刀といえば小刀だ。今まで使ってきた手裏剣や火車剣、鎖鎌とは違い戸惑いが大きい

「何、形に囚われる必要はありません。あなたたちはあなたたちの戦い方を学びなさい。私は私の戦い方でいくから」

『え、先生?2対1ってことですか?』

「はっ、泣き顔見ても知らねぇぜ?」









「グッ…」

別に過信や慢心があったわけではない、

『っは、』

松陽先生にかすり傷どころか片膝すらつかせることができなかった。

「銀時も名前も2人とも思った以上に手強かったですね」

「いや、息一つあがってない方に言われても全くもって説得力ないんですけど?」

『……先生、』

圧倒的な力のさに自分と比べて遥か遠くにいる存在のように思えるのも先生を太陽のように感じさせる一因なのかもしれない。

『……お腹空きました、』

先生を近くに感じたかった。先生の強さは少しでも手を離すと遠くに行ってしまうような、そんな寂しさを感じさせた。
先生は驚いたような顔を浮かべた後すぐににっこり笑う。

「そうですね、何か温かいものでも食べましょうか」

食い意地がはってやがる、と抜かす銀髪頭の足を踏む。
それでいい、先生は隣にいる。銀時だっている。不安を消すかのように私は先生の手を握ったが握り返してくれたその手は想像よりも冷たかった。