「じゃ、次はお前らだ。右から順に・・・」


カカシと名乗る上忍師のやる気のない自己紹介を聞き終え、アゼルは控えめに手を挙げた。


「うずまきアゼルです。好きなものは首吊り自殺です。実は昨日も試みていたのですが、どこぞの心無い人間に助けられまして・・・もう残念でなりません!将来の夢は年内に自殺を成功させる事です。自殺はやはり首吊りに限ると思います。身投げや入水を選ぶ人も多いと聞きますが、私は最もスタンダードな方法で死にたいですね。発見者に一目でこれは自殺であると主張できますし。折角自殺したのに他殺の可能性を考えられるのって、なんだか癪じゃないですか。私思うのですよ。自殺者はもっと主張するべきだって。身投げや入水なんて、事故だか自殺だか他殺だか見分けが付きにくいじゃないですか。あ、でも別にこれらを非難するわけではないですよ。あくまでも私個人の意見です。やりたい人はやればいい。ああでも、公衆の前面で自分の死に様を見せつけるのは、ちょっと違いますよ。主張も必要ですが、やっぱり奥ゆかしさがないとダメなんです。ひっそり死んで、でも発見された時に、ああ自殺したのかって第一印象を持ってもらえるような、そんな死に方が理想的なんです。因みに嫌いな事は自殺の邪魔をされることです。私が決意と覚悟を持って自殺せんとしている所に水を差すなんて、人としてどうかと思います。自殺って後ろ向きなイメージを持たれがちですが、私はいつだって前向きに自殺してるんです。だから先生、もし私が首を吊ろうとする場面に出くわしたら邪魔せず見守って欲しいのですよ。見て見ぬ振りでもいいですけれど、できれば応援して欲しいですね。その方が私も元気に快く死ねますので!」

「・・・・」


朗らかな顔で話し終えたアゼルを前にしてカカシは顔を引きつらせた。返す言葉も見つからない。
他の生徒の反応を見ようと視線を巡らせれば、同級生の2人は同じように、控えめに言ってドン引きしていた。
形容し難い沈黙がしばらく続く。

カカシはアゼルの瞳の底を覗くように視線を合わせた。
するとアゼルは、愛想の良い笑顔で応じた。
それは誰しもが浮かべる凡庸な表情に見えた。
秋の空を思わせる澄んだ青色の瞳には少しの狂気も見出せなかった。


「如何されました?先生?」


ただ己を見つめるだけのカカシを前に、アゼルは不思議そうに首を傾げた。


「・・・ああ、うん。ナンデモナイヨ」


カカシは空々しく答えると、他の2人にも同様に自己紹介をさせた。
うちはサスケもなかなか拗らせている。春野サクラもある意味拗れている。
問題の多いメンバーに、痛くないはずの頭が痛むような気がした。カカシはそっとこめかみを抑えた。


「よし、自己紹介はここまでだ。明日から任務やるぞ!」


カカシは言いながら気を取り直すつもりで、拍手をするように一度軽快な音を鳴らした。


「どんな任務ですか?できれば危険なのがいいんですけど。こう、生存率0パーセント的な・・・」

「んな任務下忍にやらせるわけないでしょ。てか上忍でもやらないから」

「それは残念です。あっ先生、あそこに素敵な木がありますよ。あの枝の形、とても縄をかけやすそう・・・・!!」

「お前少し黙ろうネ」


カカシは期待に満ちた瞳を煌めかせるアゼルの頭をスコンと叩いた。
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