突然だが、私には前世の記憶がある!

前世の私は闇の帝王の先輩で、卒業後は腹心で、嫁子に恵まれたり、浮気がばれたり、嫁と修羅場になったり、いいワインを飲んだり、闇の帝王に無茶振りされたり、胃に穴が空いたり、マグルを逆さ吊りにしたり、生ハムメロンを食べたり、そんな感じで生きていた。それはそれは愉快な人生だった。

しかし、それも今は昔。
今の私ときたら、貧乏で貧相で少々野蛮でやたら兄弟が多いウィーズリー家の末弟だ。
この私が、このアゼルが!兄や親戚のお下がりの服を着て、お下がりの杖を持って、お下がりの教科書をお下がりの鞄に詰めている。
何を言っているか分からないと思うが、実は私もよく分からない。頭がどうにかなりそうだった。
幼少期には、おむつやおねしょといった恐ろしいものの片鱗を味わった。・・・死にたい。

そんな私も、今年からホグワーツの生徒となる。
今はホグワーツ特急のコンパートメントで双子のロンの隣に座っている。
2度目のスクールライフが来るとは思わなかった。ちょっと楽しみである。


「君、じゃああるの?その、額に・・・?」

ロンが興奮した様子で相席になった少年に話しかけている。
その少年は、どうやらハリーポッターらしい。
彼は生きる伝説だ。
闇の帝王を退けた唯一の生還者。生き残った男の子として、当時のマスコミや世間を大いに騒がせた。
・・・闇の帝王のことを思い出すと胃に刺すような痛みが走った。

ロンとハリーポッターは幾つか言葉を交わすうちにすっかり打ち解けていた。
窓の外を眺めていた私は、なんとなく2人の会話に入れないでいる。
どういう訳か、双子のロンは私のことを紹介しなかった。ハリーポッターも、私を空気のように扱う。
そのせいで私の存在感がヤバイ。
私ここにいるよね?セルフ透明マントが発動しているわけじゃないよね?
別に寂しいとか思ってないけどな!


「僕のヒキガエル見なかった?」

突然ドアが開き、まん丸顔に半べそをかいた少年が顔を覗かせた。
ロングボトム家の子供だとすぐにわかった。親の若い頃にそっくりだからだ。

「ノックぐらいしたらどうなんだ」

私は飽きれながらそう告げた。
すると、ハリーポッターがツチノコでも見つけたかような顔で私を見つめる。

「僕の顔に何かついてるかな?」

あんまりにもガン見してくるので、顔が引きつった。私は珍獣じゃねーし、賞金もかかってねーぞ。

「あ、ごめん。女の子だと思ってたけど、よく見たら男の子だったからビックリしたんだ」

「ブフォッ!!」

(な ん・・・だ と ! ?)

ハリーポッターは言葉の爆弾を破裂させたことに気づいてないのか、半分照れたような顔で頭をかいている。
その向かいではロンが必死に笑いを押し殺していた。

「・・・君とはッ!もう!口をきかないッ!!」

「ご、ごめんって」

「お ん な の こ !・・・ッ!・・・ッッ」

ロンはそのまま笑い死ねばいいと思った。
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