日記でもちらっと触れた青祓ネタをまとめたよ!


主人公♀
燐、雪男の妹。つまり三つ子ってことで。
デフォ名は奥村 涼。
身長150a以下のチビで、アルビノとか萌えるけど目は青いんだろうなー。
ショートカットの猫っ毛癖っ毛。いつも寝癖がついているのを雪男に咎められつつ解かしてもらってると良い。




▼ 主人公にとってのプロローグ



―――神父さんが死んだ。

奥村涼は墓石の前に立っていた。
傘をささない兄と並んで、兄と同じように濡れ鼠になって、冷ややかな色を放つ墓石の前に立っていた。

春の雨は冷たい。

糸のように細く伸びた水滴が、灰色の視界から透明さを奪っている。
色褪せて草臥れた弔花が何とも哀れましい。

―――いっそ、泣けばいいのに。

涼は隣の兄を見上げて思った。
式の最中も、父が煙となって空へ昇る時も、兄は決して泣かなかった。
涼のもう一人の兄である雪男が静かに涙を拭っても、涼が膝を抱えて声を圧し殺しても、この兄だけは泣かなかった。

何故だろうか。
ふと考える内に、涼は寂しくなって、兄の礼服の裾をそっと掴んだ。

耐え難いものを耐えているような、辛く苦しそうな顔をで父を見つめるくらいなら、涼や雪男と共に泣いてほしかった。
血を分けあった兄妹で、静かに同じ悲しみを分けあいたかった。
一緒に肩を寄せあって、悲しいねと、父の死を惜しみあいたかった。

―――いつもみたいに、甘えさせてほしかった。

「燐兄さん…、風邪引いちゃうよ」

涼は摘まんだ裾をツイと引いた。
指先から、水を吸った生地の重たい感触が伝わる。それだけで、重たい気分になった。

「お前は先に戻ってろ」

兄である奥村燐の言葉は、まるで涼を突き放すように、雨と同じ温度で涼を刺す。
涼はそれに渋々と頷いた。
力なくよろけそうな足で、必死に地面を踏みしだいているというのに、兄は涼を一瞥たりともしない。
普段は妹を猫可愛がりしている兄のぶっきらぼうな態度に、涼は視線を俯け、もう一度首振り人形のように頷いた。

一番甘やかして欲しい時に、何の優しい言葉もかけてくれない。
身勝手かもしれないが、涼は兄をそんな風に思った。



一人で墓地の中を歩いていると、唐突な不安が背中をなぞった。
巣から落ちた雛鳥のような心細さを感じる。何故だろうか。

涼はふいに振り向いた。
雨で霞む視線の先には兄がいる。兄が一人きりで立っている。

「……そっか」

涼は泣き腫らした瞳から、また、透明な雫がこぼれ落ちたような気がした。
けれど、雨に打たれて色を失った頬に、涙が伝う感触はない。

涼はぼんやりとした頭で、これからの事を思った。
この墓地を出たら、そこにはもう父の庇護がない。
涼を優しく包んで護ってくれた父は、風が空へ連れ去ってしまった。
父がいない。庇護がない。護ってくれるものが何もない。

今、涼の眼から流れる涙は、もはや父の死を偲ぶ寂寥ではなかった。
己の未来を案じ、憂いる心が流させた涙だった。



涼は情けなく竦む足を叱咤して、靴底の擦れる音を雨にとかして、残っていた気力の全てを使って前へ進む。
そうして漸く墓地の出口にたどり着くと、そこには傘をさした雪男が待っていた。

雪男に招かれ、同じ傘に二人で収まる。
雪男は涼の頭を優しく撫ぜた。


傘の下から覗いた空は、今にも落ちてきそうな暗雲を従え、遠く遠くまで続いていた。
この雨はまだ止みそうにない。

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