いらっしゃいませ | ナノ
homecoming [ 2/11 ]

今をトキメク(まだトキメキ出したばっかだけど)アイドルになるという長年の夢が叶いつつある今日この頃。


久しぶりに一織とオフの日が重なり、二人で実家に足を運んだ。


実家から出てまだ数ヵ月しか立っていないのに、いつも歩いていた道路や公園がすごく懐かしく感じた。


もうすぐ和泉家の屋根が見えるだろうというときだった。



―――うちの家の目の前に小さなかわいらしいケーキ屋が建っていた。


「母さん?!なにあれどーいうこと?!」

「兄さん落ち着いて…!」


もしうちがケーキ屋ってことわかってて目の前に建てたんだったら……。


そんなことを考え始めてしまい、イライラが募る。


驚きと怒りを隠さず俺はさっそく母さんを問い詰めた。


「あなたたちが出ていってしばらくしてからかしら…。ついにライバル店ができちゃったわね」


困りながら笑う母。

いやいや俺は笑えねぇんだけど!!


「どんな人が経営されてるんですか?」

一織の質問に母さんは弾かれたように顔を明るくし、笑ってこう答えた。


「それがね、すっごくイケメンで穏やかな素敵な人だったの!」

「そういえば母さんメンクイだったな…」

一度喋りだしたら止まらない母さんはいつも通りで安心した。


「わざわざうちに挨拶して来てくれたのよ!小さなブーケを持って!」

ほら、あれよ。と指をさした方向を見ると、黄色と白の小さな花がきゅっと小さな花瓶に収まっていてかわいらしかった。


「ブーケだなんて…フェミニストでしょうか」

「俺らも赤いバラでも持っていこうぜ」

「告白してどうするんですか」

「そーいう意味じゃない!!」


そこまで俺たちのやりとりを見ていた母さんがこう助言した。


「あなたたちも挨拶に行ってみたら?」


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