good morning [ 11/11 ]
目が覚めると、隣に人がいた。
「…………は?」
おそるおそる自分が服を着ているか確認する。
上半身は何も羽織っておらず、下は履いていたものの、ベルトは緩んでいた。
やばい……。
昨日の俺何したんだ……?!
昨日はいつもより飲みすぎた自覚はあったが記憶があまり無いという、まさに最悪なパターンだ。
とりあえず隣のやつが誰か確認しよう、と思い横を見た。
…背を向けて寝ていて顔が見えない。
それをいいことに、俺は背中を凝視する。
ゆっくりと肩を揺らし微かに聞こえる寝息。
華奢な肩にかかる色素が薄い髪、シャツから覗く白いうなじ。
…あれ?
こいつ、もしかして…
「真琴……?」
「ん……」
ぴくりと肩を揺らし、のそりと体を起こしたのは、俺が今一番会いたかった人――真琴だった。
「がく…?」
目を擦りながら俺の方へ顔を向けた真琴に、驚いて声も出ない。
そんな俺の間抜けな面がおもしろかったのか、真琴はふふ、と笑い俺に抱きついてきた。
抱きついて……は?
「お、おい?!」
「本物の楽だ……ふふ…」
完全に寝惚けてるな…こいつ。
「夢かなぁ…」
いい夢だなぁ、とすりすりと俺の胸に頬を寄せる真琴。
「夢じゃねぇよ」
そんなかわいい姿を見て、いてもたってもいられなくなった。
真琴の頬を両手で包み、自分の唇を真琴のものに重ねた。
次の瞬間、胸に強い衝撃を受けた。
「昨日楽を預かったの忘れてた……」
「殴りながら反省すんな……!」
ようやく目が覚めた真琴に殴られた。
相変わらず手が早いやつだな…。
「服、洗っておいたから」
はい、と何事も無かったかのようにシワ一つないシャツを渡された。
礼を言ってそれを受け取り、袖に腕を通す。
…服で思い出した。
「昨日、俺何かしたか?」
「…………何もしてないよ」
目を反らしながらそう言う真琴。
若干不満そうに眉間にしわを寄せている。
昨日の俺、何したんだ……!
機嫌が悪い真琴にしつこく聞けるわけもなく…。
結局昨日のことはわからないまま帰ることになった。
玄関まで真琴に送られ、別れの挨拶を告げる。
「じゃあな。また、店に顔出す」
「…どうも」
つれねぇな、と思いながら真琴の家を出て歩き出す。
あ、昨日のこと龍に謝っとかねぇと…。
「……楽のばか」
首もとをおさえて玄関に立ち尽くす真琴の姿なんて、知らなかった。
まして、その首もとに俺がつけたものでいっぱいになっていただなんてことも。