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◆読まれる前に

この番外編のお話は相互記念に捧げるリンゴアメ様リクエストのものです。
直接本編とは関係ありません。
ここでの夢主は朔名の幼馴染み設定となっています。












はじめましてこんにちは、芹菜です。
大人になって早3年……つまり23歳。
大学を卒業して就職したはいいものの、新入社員だからいろいろと慣れない仕事をやってのけ、やっと1年耐え抜いたと一息つけた今日この頃。



今日は日曜日で仕事も休み。
朝バタバタする必要もないから紅茶を飲みながらのんびりとすごす。

そろそろお昼も近いし、何を食べようかと冷蔵庫をあける。





「………空っぽ」



そうだ、昨日は会社での疲れがたまってて買い物にいってなかったんだ。

昼食抜きだなんて夜までもたない。



「しかたない、買いにいこう」



自室にもどり、クローゼットから淡い緑色の膝丈ワンピースに、白いカーディガン、白の総レースクルー丈ソックスを引っ張りだして着替える。
今日は暖かいからこれでも大丈夫だろう。

全身うつる鏡の前に立つ。
いつもきっちり結んでいる茶髪はおろす。
休みの日くらいちょっとお洒落してもいいでしょ。


鞄に財布と鍵をいれ、茶色のパンプスを履いてアパートを出た。

ちなみにいうと私は1人暮らしだ。
8年前まで住んでいたこの街が好きで、両親の了解も得てアパートを借りているの。




「いってきまーす」


返事は返ってこないけど、アパートに向かってそう言ってから私は出かける。


“外の世界にいく”って感じがするからかな。







出掛けた先は最寄り駅にある大きなデパート。
1階には日用品や雑貨、もちろん食材も売っている。
私の家から近いところにあるから買い物はいつもここで済ませるのだ。



「昼食だけじゃなくてこれからの分も買わないとね」



カートと買い物籠を用意して野菜やら飲み物やらをいれていく。
ビタミンも必要だから果物もいるよね。

カートを押し進めて果物がある場所へと向かう。

今が旬なのは苺とかさくらんぼ……だったかな。



美味しそうなのがあるかなあと思っていると、その場所には先客がいた。

茶髪の髪を後ろで結んでいてサングラスをかけた男の人。
何やら入念に袋にはいった苺を見比べている。

苺を選ぶのにここまでする人は初めて見たかもしれない。




まぁいいや、何をしているにしてもこんなところでサングラスをかけてるような怪しい人には極力近付かないほうがいい。
さっさと苺を選んでしまおう。


私は1番とりやすい位置にある苺の袋を手に取ってすぐにその場を離れる。







はずだったのに。





「あ、その苺はやめたほうがいいよ」




はっ、話しかけられたああああ。



「えっ………あ、の……」

「それヘタのまわり白っぽいだろ?苺はヘタが緑色で全体的に赤いのがうまいんだ」

「へ、へぇー……そうなんですかー……」



私の顔、絶対ひきつってる。
何で話しかけてくるんだ!!
こっちは逃げ出したいのに!!


ニカッと笑いながらいう目の前の男に私は苦笑いしかできない。
どんなに笑顔で接してきたってそのサングラスのせいで印象が怖いんだよおおおお。





彼に怯えながらも目をそらすことが出来ずにいると、彼は笑顔からきょとんとした顔になった。



「あれ、お前……どっかで俺と会わなかったか?」

「へっ!?」

「なーんか、見覚えが……」

「ひひひ人違いです勘違いです私貴方みたいなサングラス人の知り合いなんていませんからああああ」

「サングラス人って何、どこの国の人!?」





うわあああテンパりすぎて変なこといっちゃったよどうしよう!?








「……あれ、もしかして……芹菜?」

「えええ何で私の名前……っ!?」

「なんだ、やっぱり芹菜か!!俺のこと覚えてねぇのか?」

「だから私サングラス人間に知り合いなんて「そんな人間いてたまるかああああ」」




だって知らないものは知らない。
でも、初対面のはずなのに会話がスムーズなような……。




「俺だよ、朔名。中学まで一緒だった……、つか幼馴染みだろっ」

「……え、朔名?」



朔名って……私の幼馴染みで小学校でも中学校でもやんちゃで子供みたいな性格だった……あいつ?



「ほんとに、朔名?」

「あぁ。思い出したか、“芹菜チャン”?」



“芹菜チャン”。
私が中学のとき朔名に呼ばれてた呼び方だ。
“チャン”付けの言い方がちょっと独特だったのを覚えている。



ってことは。




「……朔名かっ、思い出した!!」

「なんだやっとかぁ」

「だって身長私よりかなり高いし、染めてるし、サングラスだし……。つかサングラスかけてる時点で怪しい人だと思ってたから」

「何、俺のチャームポイント全否定?」





「つか何で芹菜がこっちにいるんだ?」



私たちは買い物を済ませて、今は1階にある休憩スペースのテーブルについていた。
他のテーブルにはお客さんがたくさんいたけど、この2人分のテーブル席があいていたのでちょうどよかった。



「私だけこっちで1人暮らししてるの。会社がこっちのほうが近いからね」

「あぁなるほどな。………それにしても、最初は誰だかわかんなかったよ、もう8年くらい会ってねぇしなぁ」

「それはこっちの台詞。いきなりサングラスかけた人に話しかけられて怖かったんだからね」

「芹菜の顔、おもしれぇくらいにテンパってたもんな」



ゲラゲラと爆笑する朔名にイラッときた。
誰のせいだと思ってんだオイ!!







「……相変わらずだね、その朔名の笑い方」

「笑い方?」

「本当に楽しそうに笑うからこっちまで楽しくなってくるんだよね」

「何々、俺の笑顔に惚れちゃった?」

「あ、ごめん今日はエイプリルフールだったわ」

「そこまでして無かったことにしたいのか」




うん、ツッコミとかもほんと変わってない。
面白い。



「なんか朔名と話してると中学のころ思い出すなぁ」

「例えば?」

「2年で私たちが同じクラスだったとき、担任のカツラとって遊んだりとか」

「うわぁ懐かしいな」

「授業中に先生の似顔絵描いた紙をまわしてたら見つかって怒鳴られたり」

「うん」

「掃除終わったあとバケツの水ひっくり返しちゃってみんなで掃除しなおしたり」

「………」

「あと、テスト中に消しゴム落として拾おうとしたら自分も椅子ごとひっくり返ってカンニング扱いされたこともあったよね」

「何で人の失敗談しか覚えてないの」





本当に懐かしい。
朔名はクラスの中心的な存在だったから失敗談も鮮明に頭に残っているんだ。

体育祭とか文化祭、合唱コンクールとかでもかなり盛り上がったけど、こういう日常的なことが真っ先に頭に浮かぶってことは、それだけ朔名の印象が濃かったからかもしれない。




「でもあのときは吃驚したなぁ」

「……まだ何かあったか?」

「卒業式」

「えっ……!!」



私がにこりと笑ってそう言った瞬間、朔名の顔がひきつった。





「朔名はみんなを元気づけるかと思ってたのに、1番最初に泣きはじめてたし」

「ああああれはっ……俺も、まだガキだった、わけであってだな……!!」

「教室では泣きすぎて私に抱きついてきたしね」

「っ、んなこと思い出すんじゃねええええ」

「顔、赤いよー?」

「うっせぇ、赤くねえええ」




朔名は顔真っ赤にさせていってくるけどちっとも怖くありません。
説得力もありません。





「ま、全部いい思い出になったじゃん」

「俺としては失態をほじくり返されてるけど」





そんな思い出話をしているとあっという間に時間が過ぎた。
久しぶりに会うと会話がつきない。
幼馴染みだしなおさらね。





「あ、もうこんな時間かぁ」

「え、いいい今何時だ!?」


焦ったようにいう朔名に私は疑問をもったが自分の腕時計に目を向ける。



「今は、12時30分だよ」

「12時30分!?ううわ、やっべ……!!」



あわてて立ち上がる彼に私も何事かと思う。




「何か約束でもあるの?」

「いや、俺ここには買い出しにきてたんだよ」

「買い出し?」

「俺は今カフェで働いてるからな。芹菜も覚えてるだろ?俺の妹のこと」


妹……、確か私たちより5歳くらい離れた子のことだよね。



「俺は妹と暮らして……あ、最近新しい家族増えたけど、だから金稼ぐために3年前からカフェで働いてんだ」

「あぁだからさっき苺買ってたんだ。カフェだったらケーキの材料に使うだろうし」

「ま、そういうことだ。じゃあ悪ぃな芹菜、俺先行くわ!!」



財布をポケットにしまって走り出す朔名。
ちょっと名残惜しいけど、お仕事だからしかたないか。
それに会えなくなるわけじゃないもんね。





「久しぶりに芹菜に会えて嬉しかったぜ!!」


走りながらこっちに向かって手をふる彼に、自然と笑みがこぼれる。
そして彼に負けじと手を振り替えした。



「私も!!」




その笑顔が見れて

(って、ちょ、待って!!苺忘れてるよこらあああ)
(あ、やべぇ、苺おおおお)

→あとがき

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