19


ケーキを食べたり周りを見渡したりと時間を潰してそろそろ3時間。



正直暇である。


そんな私とは裏腹に従業員はそりゃあもう忙しそうにあっちへいったりこっちへいったり。


朔名も普段では想像もつかないような営業スマイルでお客を相手にしている。




私がやったら絶対顔ひきつるな。





只今の時間は16時。
ちょうどお客さんもピークをすぎたころあい。

さっきよりはだいぶ店内も落ち着いてきている。




翔音くんはあれだけあったケーキをさも当然のごとく平らげていた。


……その細い体のどこにそんだけの糖分がはいるんだ。






「どう?この店は楽しめた?」




私が翔音くんを呆れ顔でみていると時雨さんがやってきた。




「結構忙しそうですね」

「うちは人手が少ないから。でもあなた達2人もバイトで手伝ってくれるんだから、その分は少し楽になると思うわ」





笑顔でいう時雨さんはとても綺麗だが、私はバイトしたことないし翔音くんだって今の現状では初めてだから役に立つだろうかと、いささか不安である。



「じゃあさっそく簡単な仕事を教えましょうか」

「はいっお願いします!!」












場所は変わって奥の控え室。

朝、従業員はみんなここで着替えたりメイクしたりと身なりを整える。


もちろん、男性用女性用と部屋は別々である。





そしてここは女性用の控え室。


ドレッサーは4つあり、そのテーブルには化粧品がそれぞれまとまって置いてある。



さすが女性部屋。
化粧品の数がハンパない。







時雨さんから教わったのは接客の仕方、レジ、準備や片付けなど。

まだバイト中ということで厨房はやらなくていいということだった。





そして第一に笑顔が大切だということ。

このカフェでのモットーは笑顔だそうだ。


お客様を接客するときはどんなときでもにこやかに。

簡単そうに見えてわりとハードだが、社会にでるにつれて必要になることだからこれは頑張らなくては。





だが1つ重要な問題があった。












「………翔音くん、笑顔できる?」

「……………………………」



長い沈黙を返された。



「どうかしたの?」



苦笑いの私をみて時雨さんが心配そうにいってきた。





「あー……、翔音くんは……笑顔が苦手で……」

「あら、そうなの?」

「………」

「やっぱり接客は、難しいですか?」

「…………いいえ、私に考えがあるわ」





真剣な顔をして考え込む姿は美人なだけにすごく様になっている。



いったいどんな考えが……。






「たとえ笑顔ができなくても、“お帰りなさいませ、ご主人様っ(ハート)”っていえば一人残らず落ちるわ!!」

「どこのメイド喫茶!?」



“これで決まり!!”みたいな顔してるけど、全然決まってないよ!?


明らかお店が違うじゃないか!!






「……お、お帰りなさい、ませ、ご主「何言おうとしてんの!?ちょっとノリノリだし!!」

「まぁ翔音くんなら笑わなくても接客だけで大丈夫かもしれないわね」

「え、じゃあ普通にこのまま……?」

「そうね。それでお客をバンバン落としてもらうわ!!」

「ここ何の店!?」

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