僕達は覚えたての行為に夢中だ。


「ンッ、ファ」
その晩も、それに夢中になってお互いの身体を貪っていた。
今までに何回したかなんて覚えてないけれど、それでも、まだ“初めて”からは数カ月位しか経っていない。回数も分からない位に、それこそ“初めて”からの数日は取り付かれたかのように、夜毎身体を繋いでいた。自慰なんかとは比べ物にならない位に気持ち良い。それが互いに好いている相手となれば、もう、満たされない所が無い程の充足感でいっぱいになる。
「ンンッ、フフフ」
互いの唇を吸い、唾液を啜り合い、身に纏ったままの夜着の隙間から身体を弄りながら、薄っぺらい布団の上をゴロゴロと転がる。たまに布団から床へと転がり出てしまって、そうすると、笑いながらまた布団の上に戻って、鼻先が触れる程の距離で顔を近付けて見つめ合う。そうして、伊作が組敷かれる体勢になると、ごく自然な動作で留三郎は片足を掴み、大きく開いてきた。
「ええ? 今日も僕が下?」
「いいじゃねーか。お前、そっちでも気持ち良くなれるだろ」
「そうだけど……」
入れるのも、入れられるのもお互いに試してみた。
その結果、最近ではほとんど伊作が受け入れてばかりだ。理由は簡単、留三郎は突っ込まれても上手く気持ち良くなれないらしく、逆に伊作は突っ込まれて気持ち良くなれるのだ。
それも、……凄く。
でも、それではなんだか自分に男としての技巧が無く、逆に留三郎が技巧に長けているかの様で悔しいので、一応のところは不満気な表情は浮かべる様にしている。
「ッツ……」
だけれども、折角浮かべた不満顔はちっとも気にされず、留三郎の手は徐に昂りを撫で上げてきた。そこに留三郎の芯を持ったそれも重ねられて、一緒に手の中で扱き上げられる。みるみる内に硬度と質量が増し、先端からは堪え切れずに漏れ出た先走りがダラダラと零れ落ちた。留三郎のものは熱を増して、そこから溶けそうな程に重ったるい快楽が生み出される。気が付けば自分もそこに手を伸ばし、一緒になって擦っていた。
「アァッ!」
性器への直接的な刺激に息を荒げていれば、いつの間にやら、滑りを纏った指先が入り込んできて思わず声が漏れてしまう。
枕元に潤滑油の容器が転がっているのが見える。いつも枕の中に隠しているそれ。それをそこから取り出して、蓋を開けて指先に纏わせるなんてのを片手だけでするんだから、器用なものだな、なんて妙な感心をしてしまう。
「ンッ、フ」
広げる様にして内部を探って来る指の感触。
実のところ、昨日もしていたので大して慣らされる事も無く、すっかりそこは解れてしまっている。
それこそ、指だけでは物足りないとクチクチ、音を立てる程に……。
「なぁ、もういい?」
互いの唇が掠る位に近い距離でそう聞かれ、我慢出来ないと何度も頷くと、そのまま下から留三郎の唇を舐め上げて塞いだ。
「ンンッ、ッフ」
一層大きく広げられた足の間に留三郎の腰が割り込んで、そのままゆっくりと貫かれる。受け入れる違和感にゾクゾクと背筋に悦が走っていく。
内臓の中をミチミチに埋められる、この感覚がたまらなく好きだった。
「ッ、ッウ、ンウ」
やがて、体内に納まった屹立が狭い内壁を緩やかに突き上げ始める。声を上げぬように歯を噛み締めて、啜り上げる様にして荒い呼吸を繰り返す。
幾ら深夜といえど、まだ誰が起きているかもわからないし、長屋の部屋の壁は、隣室の小平太の鼾が聞こえてくる位には薄い。
留三郎とこんな事をしているだなんて勿論秘密だし、大体自分達は忍を目指しているのに、その卵の内から三禁の一つを破り、こんなにも溺れているというのには後ろめたさもある。
だから、声を上げぬようにと歯を噛み、着物を噛み、布団を噛んで堪える。それでも出し入れする時に浅い位置にある前立腺を擦られると、馬鹿みたいな声が漏れてしまうから必死になって自分の口を両手で塞ぐのだ。
「ンッ、ン、……ンヒゥ」
次第に激しくなり、息継ぎがままならない位に律動を刻まれると、ただでさえ回らなくなった頭が“気持ち良い”と“留三郎”でいっぱいになってクラクラする。

そうして、その日も夜更けまで二人抱き合ってから眠りに就いた。








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