Attention please

その程度だったんだね。って


「赤司くん!
今日の部活のメニューなんだけど、これでいいかな?」

「…………うん。大丈夫。いつもありがとうな、桃井。」

「これが仕事だからね!!」

私の彼氏、赤司征十郎は眉目秀麗才色兼備文武両道と完璧人間である。
そして、
この帝光中一の美人、桃井さつきちゃんと私より、仲がいい。
というか、いつも一緒にいる。

確かに、バスケ部の主将とマネジャーだから一緒にいる機会は多いだろう。
でも、最近は私のことをほったらかしにし過ぎな気がする。

いつ電話しても出てくれないし、声をかけても少し話して直ぐ他のところにいってしまう。

自分で言うのもあれだが、
私は結構征十郎のことを考えてあげているつもりだ。

試合前にはなるべく電話だけでなくメールもしないようにしているし、
桃井さんが料理が苦手らしいので、レモンのハチミツ漬けを持って行ったりしてあげている。

けれど、今は試合前どころか試合直後だ。
今までだったら二人でどこかに出掛けていたのに…


ぐちゃぐちゃ考えている内に部活の始まる時間になっていたらしく、
教室には私以外誰も居なかった。

「………帰ろうかなぁ」

征十郎が部活を終えるにはまだ時間があるし、一緒帰る約束をしている訳でもない。
なら、征十郎が桃井さんと仲良さそうにしているところを見る前に帰ってしまおう。
どうせ征十郎は部活のレギュラー(後のキセキメンバー)と帰るのだから。

そう思い、帰ろうと席を立った。

「名字さんっ!!」

私に声をかけてきたのは同じ委員会の田口くんだった。

「田口くん。どうしたの?」

「あ、あの…
名字さんが好きです!
付き合ってください!!」

「へ……?」

田口くんはイケメンと言われるような人で、よく女の子に告白されているのを見たことがある。
その田口くんが私を好き?

私と征十郎が付き合ってる事は秘密にしている訳ではないが、
誰にも言ってないので誰も知らない…はずだ。

「あ〜えっと…
少し考えさせてくれる?」

「は、はいっ!じゃ!!」

そのまま田口くんは教室を出ていった。全速力で。

いつもなら、彼氏がいる、とか好きな人がいるとかでその場でフってしまうのだが、なんとなくこう答えていた。
まぁ、征十郎へのちょっとした仕返しだ。
征十郎が知ることはないだろうけど。

そんなことを考えていたらあと十分程度で部活が終わる時間になってしまった。

鞄に適当に教科書やノートをつめ、帰る準備をおわらせる。

「やばっ!部活終わっちゃう!!
早く帰んないと…征十郎が」

ガラッ

「俺がなんだって?」

田口くんが出ていったドアと逆の閉まっていた後ろのドアから征十郎が入ってくる。

「せ、征十郎…」

スタスタと歩き、私に近付いてくる征十郎。

「帰るよ。」

征十郎はガシッと私の手首を掴み、教室を出る。

「っい!!征十郎!痛いよ!離してっ!!」

私の手首を掴む力はすごく強く、振りほどけない。

私が何にを言っても征十郎はガン無視で、ただ家へと歩を進める。

暫く歩くと、征十郎の家に着いた。

「ちょっ!私家に帰んなきゃいけないんだけど!!」

「別に一人暮らしなんだから問題ないだろう?」

「っそう…だけど!!」

私と征十郎は二人共一人暮らしで、よくお互いの家に泊まりあったりしていた。


征十郎は自分の部屋に入ると私の身体をベットに投げつけた。

「っ!!」

ギシッとベットの軋む音がする。
仰向けにベットに着地した私の上に征十郎は跨がる。

どこか、怒っているように見えた。

「征十郎…?」

「君は、田口くんと付き合うつもりなのか?」

「え?」

まさか、征十郎は全部聞いてた?

「考えさせてってことを付き合う可能性があるってことだろう?」

「………そんなつもりじゃ」

「じゃあ、なんであんな事を?」

「っ!!」

あんな事?
私は好きで告白された訳じゃない。

それに…
桃井さんと仲良くしている貴方を見て、嫉妬に狂いそうになる私を知ってる?

知らないでしょ。

お願いだから、これ以上、私を醜くさせないで……────

「私は…征十郎だけが好きだよ。」

「俺だってそうだ。」

そっと、征十郎は、私の首に、手をかけた。

「君を殺して、俺だけの物にしたいくらいにね。」

瞬間、グッと征十郎が手に力を込め、私の首を絞める。

「っ……せい、じゅ…ろっ!!」

涙が頬を伝う。

征十郎は無表情だった。

「君が俺だけを見てくれないと、

胸が苦しくて、
でも声を掛けられなくて辛くて、
君を滅茶苦茶にしたくなって……
君の回りにいる男共を殺したくなって、


死にたくなるんだよ。」

ゆっくり、目を閉じる。
そして、最後の力を振り絞り、優しく、全てを受け入れるように、

征十郎を抱き締める。

「私は自信満々で、強気な征十郎を好きになったんだよ。」

征十郎の手が私の首から離れる。
私の上から退いた征十郎は私に背を向けるようにしてベットに座り直した。

「………………行きなよ。
名前にはまだやらなきゃいけない事が山ほどあるんだろ?」

私はなにも言わずに扉を開いた。

「もし、俺が死んだら…
君は泣いてくれるかい?」

声が震えるのを抑えながら、
小さく、呟いた。

彼の耳には、ちゃんと、届いたようだ。





(「って、嘲笑ってあげるよ。」)
(「君らしいね」
扉が閉まる直前、そう聞こえた)
(そして私は、その場に泣き崩れた。)


*


それから1ヶ月後、
青峰大輝が本来の才の頭角を表す。

他のレギュラーも次第に普通のバスケプレーヤーとは駆け離れた力を持つ選手になった。


それから、帝光中バスケ部レギュラーはキセキの世代と呼ばれるようになる。


彼らの名は、
瞬く間に全国に知れ渡った。



勿論、私の恋人も、
帝光中バスケ部部長、
キセキの世代を束ねる者として、

才あるバスケプレーヤーとして、
その名を、歴史に刻み込んだ。


「試合、頑張ってね。」

「あぁ。行ってくる。」

私、名字名前も、
胸を張って彼、赤司征十郎の隣に居るのだった。


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