Attention please

拝啓、お母様

ああもう、今すぐ消えてしまいたい。



9月1日。二学期の最初の登校日。
特に授業があるわけではない今日はこの三ヶ月間の席を決める、席替えです。

一学期はレディーファーストと言うことで女子からだったので、男子からだ。

このクラスの席替えは不思議なもので、完全くじ引き制だ。
だから基本四人グループを作るのだが、全員男子だったり全員女子だったり、最悪だと一人だけ男子または、女子ということになってしまう。

まぁ、6番さえ引かなければ今学期は安泰だ。
運良く6番以外は女子一人だけという場所がないから。

くじ箱に手をいれ、これだ!と思った一枚を引く。

女子が全員引き終わると開票だ。

「(何番だろ…)」

そっと二つ折りにされていた紙を開いた。

グシャッ

「いやいやいや。」

ブンブンと頭を振って現実逃避する。が、皆自分の新たな席に座り始め、6番の席が空いてしまう。

泣く泣く荷物をとり席に着く。
窓側の一番後ろ。
場所的には最高だ。
だけど…
右隣があの美化委員委員長の幸村さん。
前が生徒会会長の跡部さん。
斜め前…つまり、跡部さんの隣が保健委員委員長の白石さん。

3人ともテニス部のレギュラーで、うちの学校のイケメントップ3。
言わずもがな、そんな3人を女子がほっとくわけがない。
AYSと呼ばれる所謂ファンクラブが結成されている。
どちらかというと抜け駆けさせないための牽制だけど。

つまり、このクラスにはこの席になりたかった女子が沢山いる。
詳しく言うとこのクラスになりたかった女子も沢山いるし、
この学年になりたかった女子も沢山いる。

「よろしくね、名字さん」

「え!?あ、はい。よろしくお願いします。ゆ、幸村さん。」

「ふふっ、別に"さん"じゃなくていいのに。」

にこりと笑った幸村さん。
怖いんですけど。ついでに幸村さんファンも。

「後ろの方で黒板見えない方などいますか?」

あ!!これで席を前にしてもらえば…!

手をそっと挙げようとするとバッと跡部さんが振り向いた。

「な、なんですか!?」

「お前、確か視力両目2.0だったよな?」

「うえ!?あ、ぅ、はい…」

どうしよう!
跡部さんわざと?席変えるなってこと?
怖いよ、こっちもついでに跡部さんファンが怖いよ。

「班、一緒やなぁ。よろしゅうな。」

天然ですか?
やめてくれません?もう席変えられなくなっちゃったじゃないですか。
私は平和に暮らしたかっただけなのに!
天然って怖いよ。白石さん。
またまた白石さんファンも。

「あ、言い忘れてましたが、この4人班は冬休み中の修学旅行の班も兼ねてますから。」

ちょい待ち!?
え、私女子一人なんですけど!?

「今どき間違いなんて起きないでしょうから部屋は男女共同ですよ。」

泣いてもいいですか?
女子(AYSの方々)が私に間違いを起こす可能性大なんですけど!?
まじで、取り返しのつかない間違いを!



あなたの娘はくじ運が皆無のようです。
(今すぐ帰郷してもいいですか?)
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