カップケーキ戦争 4
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 恥ずかしいとか、そんなこと。

 なりふり構っていられない。



 その瞬間の曽根のカオといったら、もう間抜け面という以外の何物でもなかった。

「せっ、せとっ?」

 急に目の前に飛び出してきたわたしを見て、曽根がすっとんきょうな声をあげた。『カップケーキの子』も、両目をしきりにパチパチとさせて驚いている。

 そんな二人に目もくれず、わたしは彼にしがみついた。

「ぅげっ」

 勢いあまって頭が彼の胸元に当たる。曽根は苦しそうに呻いて、一歩後退った。わたしは黙って腕の力を強める。それに気がついた彼がおそるおそる、声をかけてきた。

「瀬戸……?」

「……やだ」

 ぐっと額を彼に押しつけて、わたしはポツリと呟いた。それに曽根が首を傾げる気配がする。

 ぱちん、と自分の中で何かが弾けたような気がした。

 曽根の身体に回してた腕を解き、今度は胸元を掴んで引き寄せる。

「やだって言ったのっ!」

「――っ」

 曽根が息を呑んだ。

 ぐいっと視線を向けた先には、彼の驚きに染まった顔があるだけ。他には何も見えない。普段だったらあり得ないくらいの至近距離にも顔が赤くなることはない。

 もうそんなこと問題にならないくらい、わたしの頭の中はぐしゃぐしゃだったんだ。

「な、ん、で、分かんないかなあ!」

「お、ち、つ、けっ! せ、と」

 ガクガクと揺さ振られながら、曽根は何とかわたしを宥めようとする。だけどわたしの勢いは止まらない。あれほど嫌われるかもしれないと怖がっていた気持ちは、もうどこかに行ってしまったようで。今はただ、もう腹が立つやら悔しいやら寂しいやら……いろんな気持ちがない交ぜになって、箍(たが)が外れたみたいにわたしは曽根に突っ掛かっていった。

「ヤキモチ妬いて怒ったって、言ったばかりだったのにっ」

「わ、分かってるって」

「わかってないっ!」

 ――わかってないよ。

 曽根の顔を真っ直ぐ見上げて、わたしは今度は押し殺した声で呟いた。



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