カップケーキ戦争 3
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 人間、頭に血が昇るとホントにろくなことがない。


「で」

 ずずぃっとわたしの目の前にタコさんウインナーを突き出して、冴香がのたまった。

「何がどうしてこうなったのか、説明してもらってもいいかしら?」

「……ハイ」

 明らかにこめかみを引くつかせている彼女に見つめられ、わたしはオドオドと返事を返した。少し離れた席からマミーが小声で、ガンバレーと応援してくれる。その声援を受けつつ、わたしはぽつりぽつりと話し始めた。



 わたしが曽根にイチゴ牛乳を投げつけた、その翌日。

 昼休みになったと同時に、わたしは冴香に美術室に連行された。その先にはマミーが困ったカオで待っていて、開口一番にこう言われたのだ。

「タカが怖くて練習になんないんだけど……」

 昨日、あれからどうしたの? その問いに頭をグシャグシャと掻き毟りたくなった。もちろん今日もわたしはおだんご頭だから、そんなことできるわけもないんだけど。

 立ち尽くしたまま唸っているわたしを見て、二人が顔を見合わせた。そして椅子に座るように言われる。

 昨夜あれからずっと頭の中がごちゃごちゃでロクな考えが浮かばなかったわたしは、ほとんど反射に近い動きで席についた。そんなわたしを冴香は眉をひそめて見ると、代わりにわたしのお弁当箱を開けてくれる。そしてとりあえず食べるよう、促された。

 それから少し時間が経って、冒頭の冴香の科白になるわけなんだけど。

 わたしの話を聞いた後、二人は揃って頭を抱えた。そして口々に言う。

「タイミング最悪」

「ていうか、曽根バカ過ぎ」

 わたしは黙ったまま、卵焼きを口に運んだ。お母さん、ごめんなさい。まるで砂を噛んでるような気分です。

 わたしがそんな親不孝な思いに沈んでいると、離れた所でパンを片手にしたマミーが深々とため息をついた。

「そりゃ、タカが落ち込むわけだ」

「え?」

 その言葉に、わたしは目をぱちくりとさせた。

 だってさっき、怖くて練習にならないって言ってなかったっけ?

 表情だけで疑問符を飛ばすと、彼は肩をすくめて答えてくれる。

「不機嫌なのと違くて、もう雰囲気が重苦しいんだよ。……ヘタに近付けないくらいにね」

 ――あの『どんよりオーラ』で俺、窒息するかと思ったもん。

 曽根とバッテリーを組んでる以上、どうしたって練習中に関わりを絶てないマミーは微妙に表情を引きつらせた。冴香も言う。



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