カップケーキ戦争 3
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「一応、表面上は取り繕ってるけどね。目は虚ろだし、ときどき意識飛ばしてるし」

「そんなに?」

 わたしは申し訳なくなって身体を縮こませた。かろうじて動かしていた箸を止めてうなだれてしまう。

 ――まさか、そんなことになってたとは。

 当然というか何というか。今日、わたしは曽根と話していない。それどころか顔も極力合わせないようにしていた。まだ彼に腹を立てているせいもあるけど、自分のことでいっぱいいっぱいで余裕がないのがホントの所だ。

 だってこんなんじゃ、わたし、曽根とつきあっていけない。

 あんな小さなコトで妬いてたら、すぐにウザがられて嫌われてしまう。そんなのはイヤだ。

 わたしはただ彼が好きなだけだ。一緒にいたいだけだ。そのキモチが変に偏って、彼を傷つけたり自己嫌悪に陥ったり……そんなことのためにこのキモチがあるわけじゃないのに。

 黙りこくったまま、目線が上げられない。そうやってずぶすぶと思考の海に沈んでいくわたしを引き上げてくれたのは、いつも通りはっきりとした冴香の声だった。

「落ち込むくらい、曽根はアンタが好きなんでしょ」

「そうかなあ……」

 とても今のわたしに、そう思える自信はない。こんな嫉妬深いカノジョじゃ、すぐに嫌われてしまう。わたしがうなだれたままでいると、マミーが苦笑混じりに口を開いた。

「瀬戸はさあ。ホント、ケッペキだよね」

「え……?」

 前にも言われた科白。

 それを耳にして、わたしは彼に視線を向けた。マミーの表情はとても穏やかだ。だけど、少し寂しそうにも見える。

 ――どうしてだろう。

 不思議に思ったけど、あえて訊ねることはせず、わたしは彼の言葉の続きを待った。

「瀬戸はタカが好きなんだから、ヤキモチ妬くのは当たり前のことだろ? タカの鈍感さに腹が立つのも、当然のことだろ?」

 それは自然なことなんだと彼は言う。

「それを必要以上に悪いモノだと思って、自分の中にあったらいけないモノみたいに扱ってたら、苦しいだけじゃないか」

 今わたしの中にある思いは、イイものもイヤなものも全部曽根が好きだというキモチから生まれたものだ。彼を好きだと思う限り、どうしたって付いてまわってくる。



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