不可解な彼女 1
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 瀬戸初璃(せと・はつり)。

 俺はコイツのことがよくわからない。



「と、言いますと?」

 さっき飲み干したばかりのスポーツドリンクのペットボトル。それを片手で弄びながら、中学時代からの悪友兼部活内での相方が話の続きを促してきた。俺――曽根隆志(そね・たかし)は、眉根を寄せた表情を崩すことなく口を開く。

「何でアイツは恥じらいとか奥ゆかしさとか、そういうもんがないんだ?」

「母親の腹の中にでも忘れてきたんでない?」

 ニヤリと愉しげに口元を歪めて悪友――間宮哲(まみや・てつ)は言った。俺は無言で奴の脛を蹴りつける。

「いってーな! てめえ、手加減って言葉知らねーのかっ」

「お前に関しては必要ない」

 俺がきっぱりと言い放つと、哲はぶつぶつ言いながらこちらに背を向けた。『それでも俺の女房役かよー』とぼやく姿は、ガタイが大きいだけにかなり鬱陶しい。

 俺はげんなりとして深く息をつくと、ゆっくり空を仰いだ。

 刺すような真夏の日射しが、肌にも目にも痛い。炎天下での部活を終えて、俺と哲は駐輪場に向かっているところだ。ちなみに、俺らは野球部の二年生バッテリー。俺が捕手で、哲が投手だ。この付き合いも中学時代からのもんだから、多少乱暴に扱ったところで問題はない。

 夏大が終わって三年が引退して、部の中心が自分たちに回ってきてからまだ間もない。何となく物足りないような、落ち着かない気分で練習を終えた。落ち着かないのは今日が珍しく午前中であがりだったからかもしれない。――そんな、午後。

 道すがら俺は最近の疑問というか、悩みというか――そういったものを、哲に投げ掛けてみたのだが。(まともな答えを期待した俺がバカだった)


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