不可解な彼女 2
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 未だに鬱陶しくいじけているヤツをシカトして、俺はバッグを担ぎ直した。すると、何やら遠くから声がしてきた。

「あ?」

 気は進まなかったが、ゆっくりと振り返る。傍らの哲も丸めてた背筋を伸ばして、声の主を探す。そして再び、ニヤリと笑った。

「噂をすればってか」

「黙れノーコン」

「ノーコン今関係ないし!」

 またもやいじけモードに移行しようとする哲を黙殺して、俺は声の主を待つことにした。呼ばれているのに無視するほど、悪い性格をしてるつもりはない。

「そ―――――ね――――――っっ」

 はいはい、ちゃんと聞こえてますよ。頼むからもう少し控えめな呼び方はできないものか。

 俺は眉間の皺を更に深くして、怒鳴り気味に応えてやった。

「ンだよっ!瀬戸っっ!」

*  *  *


 校舎の遥か彼方から、俺らを見つけて走ってきたのは瀬戸だった。

 話題に出てた、瀬戸初璃。

 同じクラスで、出席番号の都合で日直やら班割りやらでやたらと縁のある女……友達、だ。――少なくとも、俺にとっては。

 瀬戸は年の割に小さい体をぴょこぴょこと跳ねさせながら、俺たちの所まで駆けてきた。顔が赤いのは暑さのせいだろう。たぶん。

「お疲れさまー! 野球部、もう終わりなの?」

 夏空に負けないくらいの明るい表情で、瀬戸は俺を見上げてくる。その視線は痛いくらいに真っ直ぐだ。俺はそれを真っ向から受けとめることができなくて、不自然じゃない程度に目を逸らす。

「おう」

「瀬戸瀬戸、俺もいるんだけど」

「おう! マミーもお疲れ」

 俺の後ろから顔を出した哲に、瀬戸は妙な呼び方で挨拶をした。案の定、哲は顔をしかめて唸る。

「マミーはやめろ……」

「えーかわいいのに」

 ねえ? と首を傾げる彼女。それについてはノーコメントだ、瀬戸。



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