だって冬ですから
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 冬は好き。

 冷たい空気に触れてると、気持ちが引き締まる。何ていうか、スッと背筋を伸ばしたくなるんだ。

 寒いからつい身を縮こませてしまう人のほうが圧倒的に多いのだろうけど、わたしは背筋を伸ばして颯爽と歩くほうが好き。冬の冷たい空気に負けないように。

 だからといって、寒さを感じないわけではないんだけどね。



「あれがオリオン座でしょー……」

 一人、夜空を指差して彼を待つ。今日もハードな練習を終えて、彼は部室で着替え中。わたしはそれが終わるのを部室の前で待っているところだ。

 ふと見上げた星空がとてもキレイだったから、そのまま星座探しを始めてみた。

 空を差す指先は完全にかじかんでいる。いつもなら手袋が必須アイテムなんだけど、今朝は寝坊して遅刻ギリギリに家を飛び出してきたせいで忘れてきてしまったのだ。

「あの明るい星はー……」

 ――何だっけ?

 ひとりごちて首を傾げた。理科の授業で習ったはずなんだけど。

 ポケットに手をしまいこんで、記憶を掘り返す。こういうのって思い出せないと、いつまでも気持ち悪いし。えーと、確か。

「何、唸ってんの」

「あ、曽根(そね)」

 静かに開かれた部室の扉から、ひょっこり曽根が姿を現した。まだ室内にいる仲間に軽く手を振って、ドアを閉める。

「お疲れさま」

「おー」

 向き合ってねぎらいの言葉をかけると、彼もポケットに手を突っ込んだ格好で応えてくれた。そして、そのまま訊ねてくる。

「で、ぶつぶつと一人で何やってたんだ?」

「あのね、星」

「星?」

 間を置かずに問われて、わたしは大きく頷いた。そしてさっきの疑問をそのまま、曽根に向ける。

「そう。オリオン座のさ、明るい星の名前って何だっけって」

「どっち?」

 曽根が視線を上向けた。その先にあるのは、冬の星座の代表格であるオリオン座。

 オリオン座を探す目印である三ツ星――その左上と右下にある星がそれぞれ一際明るくて、授業で名前も習ったはずなんだけど。

「どっちも」

 彼と同じように空を眺めながらわたしは言った。すると、曽根はため息混じりに教えてくれる。


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