デートに行こう! 2
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 人間、何かしら楽しみがあると時間が過ぎるのを早く感じるみたいだ。

 この一週間は、今までになく早く過ぎ去ったような気がする。練習試合に向けて充実した日々を送っていたからというのも勿論あるが、一番はやっぱり瀬戸との約束だろう。

 いや、ガラじゃないのはよく分かってる。だから、俺は楽しみにしてるような素振りは見せないようにしてたんだけど。瀬戸はとても楽しみにしてくれてたようで、ことあるごとにヘラヘラと締まりのない笑みを浮かべていた。(そのせいで女王とか投手とか主将とかに散々からかわれた)

 そんなこんなで時は過ぎ、日曜日がやってきた。



 待ち合わせの場所は、いつも別れる駅だった。自転車を駐輪場に停めて、改札口へ向かう。

(十分前、か)

 ケータイで時間を確認して、短く息をついた。

 ちょっと早かったかと思いつつ、しかし遅いよりはいいだろう。そう思い直し、俺はジャケットのポケットに手を突っ込んで、ゆっくりと階段を昇る。

 幸いなことに、今日の天気は晴れだった。風もほとんどないから、日なたにいるぶんには過ごしやすいかもしれない。

(……っと)

 一番上まで昇りきり改札のほうを見ると、少し離れた壁ぎわに瀬戸が凭れて立っていた。

 通学で着てるのとは違う白いコートに、スカートとブーツ。髪型だけはいつもと同じ団子頭で。

 さっさと近づいて行きゃいいんだろうけど、何となく足を止めてしまった。

 普段のアイツはホントよく笑う。人懐こいし、元気だし、よく喋るし。どっちかというと賑やかな人種だ。だけど時々、すごく静かな表情をするときがある。――例えば、今みたいに俺を待っているときとか。

 気がついたのは最近だ。毎回毎回彼女を待たせて、偶然覗き見たその表情。決して寂しそうだとか、悲しそうだとか――そういうモンではないんだけど。

 触れることをためらってしまうような、ただ静かで凛とした、そんなカオ。冬の早朝の空気に似ているかもしれない。



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