デートに行こう! 2
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 俺は知らなかったアイツの一面を見て――知らないことがあるのは当たり前なのに、何ていうかドキリとした。

 つきあってなかったら、きっと目にすることすら叶わなかった表情に惹かれたんだ。野球以外のことでそんなふうに心が動かされるなんて、以前の俺だったら想像もしなかっただろう。正直、瀬戸と会うまではそういうことがひどく煩わしいモンに思えてたから。

 それが今じゃ多少振り回されるくらい、どうってことなくなってんだから不思議なもんだよな。

 再びゆっくりと歩を進めながら苦笑う。

 瀬戸はどこを眺めるでもなく、ただ立っている。頬が赤く見えるのは、俺の気のせいか?

 不意に感じた違和感に首を傾げながら、俺は彼女に近づいた。

「うっす」

「……あ、おはよー」

 片手を上げて声をかけると、瀬戸はいつもより随分と間をおいて挨拶の言葉を口にした。

「反応、遅くね?」

 俺が訝しんで訊ねると、瀬戸はへらりと笑う。

「昨夜、緊張してなかなか眠れなかったから。まだ頭が起きてないかも」

「今更?」

 二人きりになるのは、これが初めてってわけじゃない。俺がさらに首を捻ると、瀬戸は少し唇を尖らせて言った。

「だって初デートですから」

 そう呟いた頬は、やっぱりいつもより赤い。俺は思ったままをすぐ口にした。

「お前、やけにカオが赤くねえ?」

「……そう?」

 瀬戸はきょとんとして、自分の顔を指差した。俺は大きく頷く。しかし瀬戸はまったく頓着せずに、すぐに俺を追いたて始めた。

「別に何ともないから早く行こうよ!」

 ほらほら、と券売機のほうに押される。結構な力だ。ってことはホントに何でもないのか。

 僅かに顔をしかめて俺は財布を取り出しながら、切符を求める列に並んだ。


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