無表情でいたいわけでも、
喋りたくないわけでもない。
本当は色んな人と沢山喋りたいかと言われたらそらはちょっと違うけど、普通に会話をして、面白かったら笑ったり、ムカついたら怒ったり泣いたり。普通のことが普通にできればいいのになとは思っていた。
「家が燃えてるぞ!!」
「誰か消防に連絡して!」
「焔人が出たのかな…?」
身の回りの全てを失ったのは5歳か6歳の時で、それはあまりにも突然だった。
「…な…なん……なんで…」
家を出ていたのはほんの数分だけ。
家族に褒められるのが嬉しくて、休日のたびに何か買ってくるものはないかと家族に聞いてまわっていた私は、その日もお使いに出かけていて、その帰りだった。
優しいお母さんとおばあちゃん。かっこよくて強いお父さん。なんでもつくれるおじいちゃんーー大好きな家族は皆燃えてしまった。
「目が覚めたんだね。大きな怪我がなくてよかった。…それと、ちょっと難しいかもしれないけど、よく聞いてね」
あとで聞かされたのは、あの火災は焔人化した父が原因だったことと、私以外の全員が焼け死んでいたこと。
私は家族を助けようと、燃え盛る家に飛び込んでいったのに、なぜか火傷一つ負っていなかったらしい。
ーー幼稚園や家でなんとなく聞かされていた炎の大災害や焔人、ネザーの話。友だちと「こわいね」「やだね」と言っていた日々。
私が目の当たりにしたものはそんな生易しいモノではなかった。
当然炎が怖くなった。しかしそれがきっかけになったのか、私は能力に目覚めてしまう。しかも第三世代だ。
炎なんてもう一生見たくない。
そう思っていた。
けれどある日届いた一通の手紙によって
私は炎に立ち向かうことを決心した。
ーーー
オレハ アノ日起キタ火災ノ 真実ヲ知ル者
オ前ノ家族ヲ 奪ッタ者ヲ 知リタケレバ
コノ手紙ノコトハ 誰ニモ話スナ
オ前ノ父親ハ 人ノ手デ焔人ニナッタ
真実ヲ知リタケレバ チカラヲツケロ
時ガクレバ会イニ行ク
オレハ オ前の味方ダ
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