昨日は全くできていなかった第二世代能力のコントロール。しかし何があったのか、今はまるで別人のように完璧にできている。
新門はナナが能力を操作して凍らせたところは見ていないが、下に転がる氷の球は焔人から放たれたものを凍らせ、今し方鎮魂を完了した焔人へと一直線にナナの足元から伸びていた氷は、自分が来るまでの足止めに使ったのだと推測していた。
ーーそう、まるで昨日とは別人のように。
一見現場に真剣な表情で立つ消防官だが……新門にはそうは見えなかった。
覚悟を決め、何かを考えている横顔。
その"何か"はきっと普通のことじゃない。
昨夜、縁側で呑んでいた時に醸し出していた危険な空気ーー。アレと似ている。
「お前、なんでいきなり使えるようになったんだ?」
「…多分、覚悟が決まったからだと思います」
「覚悟?」
「私は甘えていました。自分の恐怖に。ーーでも精密なコントロールはまだまだなので、今日もよろしくお願いします」
ーーそう言って頬を緩めるナナは、体も顔も新門の方を向いているのに、目は合わせなかった。
「ナナ」
「…はい?」
初めて名前で呼ばれたことにほんの少し驚く。ここに来てからは常に「お前」とか「オイ」、「テメェ」だった。
「今晩どっか飲みに行かねェか」
「でも私、お酒弱いですよ」
「知ってる。昨日誰が部屋まで運んでやったと思ってんだ」
「最終的には紺炉さんが部屋まで運んでくださったと聞きました」
「うるせェ細けんだよ」
「何時ですか?」
「んなもんどうせ詰所にいんのにいちいち決めてどうすんだ」
「新門大隊長は大雑把ですね」
「うるせェ第一の連中と一緒にすんな。テメェは慣れたら口が達者だな?」
ーー無表情の言葉の殴り合い。しかしそこに怒りはなく。
「…そうでしたね、すいません。新門大隊長」
「いつまでも堅っ苦しい呼び方してんしゃねェ。第一お前俺と歳変わんねェだろ」
「立場は全然違うので」
「…ああ言えばこう言う」
「紅丸ちゃんでいいですか?」
直後、ナナの顔面を新門の大きな手がガバリと鷲掴みにする。
「喧嘩売ってんなら買ってやるぞナナ」
「冗談で…痛い痛い痛い…」
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