「もういいか!」
「まだ」
「ヒナもやる!」
「ヒナはちょっと待ってて」
風呂ではヒカヒナ二人ともの面倒を見て、上がったら髪を乾かしてやり、髪型を整えてたら浴衣を着せる。
ナナは他人の髪を洗ったり乾かしたり、浴衣を誰かに着付けた経験は一度もなかったが、ヒカヒナの指示と勘に従って難なくこなしていた。ーーそう、ナナは勘とセンスが良かったのだ。
そんな"デキる"ナナを意外と単純な双子は少しずつ気に入り、朝食へ向かう頃にはへばりついていた。
「「若ー!!」」
「……どういう状況だ」
朝食の用意された部屋に入るとすでに新門がいて、ナナとナナにへばりついた双子の3人を凝視する。
いつもなら飛びついてくるはずの双子は、ナナから離れずに片手を上げて挨拶。そんな二人に服の袖を引っ張られているナナは、「おはようございます、昨日はありがとうございました」と頭を下げた。
「おお、ナナ。煩いのが入ってこなかったか?悪ィな、行くって聞かなくてよ。もしかしてお前さんが全部やってくれたのか?髪も服も」
「はい。浴衣、合ってますか?「誰が煩ェって!?」「潰すぞ紺炉!」……。」
「朝から煩ェぞヒカヒナ。さっさと座って食え」
「おう、完璧だ。よかったな二人とも綺麗にしてもらって」
「若!こいつヒナたちの姉貴にしてやることにしたぜ!」
「コイツ、ヒカヒナの身の回りのことなんでも出来るんだぜ!」
「「ウッヘッヘッヘッヘッ」」
困ったような、嬉しいような。そんな感情をナナは素直に表情に表す。
新門と紺炉は「珍しいこともあるもんだ」と3人を見ていた。まさかあのプライドの高い双子が、突然やってきた見ず知らずの人間を自分たちの上に立たせるとは。
「あんまりナナを振り回すんじゃねェぞ。この後も稽古があんだ」
「紺炉!ナナは強ェのか!」
「のか!」
「おう、強ェよ。ほら、茶碗出せ」
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