ーー翌日。
朝が苦手で週4日は先輩に叩き起こされている筈のナナは今朝、珍しく自力で起きることに成功した。この場にその先輩の誰かがいれば酷く驚いていたに違いない。帰っらカリムに自慢すると決意し、ナナは布団から出た。
それにしても自力で起きれるときはなぜかいつも早くに目が覚める。いつもこうならいいのに。
「…(昨日、どうしたんだっけ)」
縁側で新門と呑んでいた記憶はあるが、そこから先が思い出せない。…そういえば服が呑んでいた時に着ていた私服のままだ。
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とりあえず顔を洗いに行こうと部屋を出て、少しすると、庭で水やりをしている紺炉が目に入った。
「おうナナ。早いな、よく眠れたか?」
「おはようございます紺炉さん。よく眠れたんですけど、昨日のことをあんまり覚えていません」
そう言うと、紺炉は思い出したように笑う。
「昨夜(ゆうべ)は俺が運んだんだ。つっても紅が運んでる最中に俺が代わったんだけどよ。紅の酒に付き合ってくれてたんだろ?ありがとな」
「あ……」
そういえばあの時、一度意識が落ちて……その後誰かに運ばれて、布団をかけられたような記憶がある。
「申し訳ありません。運んでいただきありがとうございました」
「いや、気にするな。ウチじゃよくあることだ。寧ろ気づいてやれなくて悪かったな。紅は女とサシで呑んだことがねェもんでよ」
「いえ、私が呑み過ぎたのが悪いので」
「ナナは本当にいい奴だな。…っと、顔洗いに行くんだったな。風呂沸かしてあっから、ゆっくり浸かってこい」
ーー「いい奴」なんて初めて言われた。
その一言で顔も洗っていないのにすっかり目が覚める。それに風呂まで。こんな早朝に沸かした上でもう仕事に取り掛かっているなんて。
「すみません…、ありがとうございます。でも、紺炉さんの方がいい人だと思います」
「ありがとよ」
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