この組手には、立会人がいない。
紺炉中隊長は詰所で仕事があると言っていた。……なら、一体誰がこの組手の勝敗を決めるのだろうか。
周りで盛り上がる町の人たちは、炎が飛んで建物が壊れようが全く気にする様子がない。それどころか、それすらも楽しんでいるように見える。これだけ暴れても止めないということは、この人達に期待はできなさそうだ。
「何を"待って"んだ」
「…………」
ーー多分、この思考は読まれている。
私はさっきから新門さんの攻撃を避けてばかりだし、それもあっての質問なんだろう。
新門さんは私に最初、「俺を殺すつもりで来い」と言った。だから多分それに近いところを新門さんか私のどちらかが取らない限り、この組み手は終わらない。
「俺は今からお前の命を刈るつもりでいく。こっからは第二世代能力も使え」
極限状態の中で使い方を覚えろ。
そういう意味なのかな。
「………わかりました」
この人は手合わせの中で人の思考や感情を読み取る力がかなり優れている。
ーー私はどこまで読まれた?
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