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- ナノ -

「バーンズ大隊長、失礼します」

「来たか」

シンラとの組手の後、私は大隊長に呼ばれ、大隊長室へと向かった。

「突然ですまないが、ナナ。君には第七に二週間ほど研修に行ってもらおうと思う」

心臓が締め付けられるような感覚が走った。
私を第七に行かせる理由はわかる。第七の大隊長、新門紅丸ーー、彼は第二世代と大三世代の両方の能力を持ち、それを自在に操ることができる唯一の煉合消防官。つまり、教わってこいということだろう。

バーンズ大隊長は同じ第二世代能力者であり上司でもあるカリムさんに私の指導をさせたけど、結局私はニか月経っても能力を扱い切れていない。カリムさんの教え方が悪いんじゃない。私の恐怖心が悪いんだ。

でもなんでこのタイミングなんだろう。
正直今研修に出されるのは困る。カリムさん以外の二人の先輩の中から犯人を見つけないといけないのに。

「………なぜ今なんですか」

「普段、第一の主力である君を簡単に抜くことはできない。だからこの新人研修期間を利用することにした。つい先程許可が取れてね」

確かに理に適ってるけど、そうなれば私はその間に人工的に焔人を作る犯人を追えないし、犯行現場に駆けつけることもできない。

ーーでも、断れない。

「君はその能力に目覚めた時のトラウマが身体に染みついてしまっていると、カリムが言っていた。優秀な君が、二ヶ月経っても能力を扱いきれない理由はそれだとね」

「はい。申し訳ありません」

「謝る必要はない。とにかく学んできなさい」




夜、日が変わる少し前。

部屋で書類を仕上げていたカリムの耳に、"コン………コンコン"と独特のノック音が届く。
誰が来たのかはそのノックの仕方で分かったが、こんな時間に来たの初めてだった。

ペンを置いて立ち上がり、部屋の扉を開けると、思った通りの人物がいた。ナナだ。

「こんな時間にどうした」

表情はいつもと同じ。いつもと違うのは、パジャマ姿なことと、なぜか手足の長いもこもこのカエルのぬいぐるみを抱き抱えていることだった。

互いに秘密のノックの仕方を共有していたが、カリムはナナの、ナナはカリムの部屋に入ったことは今までに一度もない。

ここが施設内ということもあり、無いとはいっても絶対とは言い切れない男女のアレ的なことが起きても困るし、二人の立場上、万が一誰かにそれを見られて噂にされても困るからだ。

「こんな時間にすいません。どうしてもお話ししたいことがあるので、入れて下さい」

カエルのぬいぐるみを抱き抱えてはいるが、その顔は真剣だった。そしてこのカエルのぬいぐるみはーー

「安心してください。女一人じゃないです。このカエルはオスなので、男女で一つの部屋に入ることにはなりません」

「・・・。」

ーーー二ヶ月前のあの日、抑えていた感情を爆発させ、互いに秘密を共有するようになってからのナナは、裏の社会にも関わっていないし(カリムしか知らない)、確実に良い方向に進んでいった。

けれどもそのせいか、それとも元々持っていた要素なのか、、ナナは時折子供のような素直さや発想でカリムを別の意味で驚かせるようにもなっていた。

「………入れ」

「ありがとうございます」

ヤなタイミング
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