「少しは落ち着いたか?」
「………たぶん」
なんとかナナを落ち着かせ、発火させて氷を溶かすことが出来た。幸い怪我も凍傷も免れたが、右手は氷のように冷たくなっていた。
落ち着いたーーとはいっても、元に戻ったわけではない。あのナナが敬語を崩し、まるで叱られた子供のように両脚を抱えてうずくまっているのだから。
「…その力は、今目覚めたのか」
「………」
ナナは隣に座るカリムの問いに答える代わりに一度頷いた。
「(…凍る前に一瞬炎が出た………ナナの目覚めた能力は、単に炎を凍らせちまう能力ってことか?しかもそれがなんで今……)」
「私……しんじゃうのかな」
ーーなんにせよ、ナナが精神的にかなり弱っているのは確かだ。
これがナナの本来の姿だったのか、それともパニックを起こしたことで一時的にこうなっているのかはわからないが、いずれにしてもナナはナナだ。
「お前はそんな簡単に死なねェから安心しろ」
「絶対ウソだ…」
「ウソじゃねェ」
ーーお前はガキか!ガキになると人を信じねぇみたいな性格だったのか!!……………とカリムは言いたくなったが抑える。
「……さっきの蟲、なんなんですか」
ようやく元に戻ってきたナナはいつものように冷静に、そして敬語で話し始めた。
「一昨日の事件で見つけた。あとこのことは、お前以外の誰にもまだ言ってない」
「…どうしてですか?」
「お前を信用したいからだ」
「………どういう意味ですか」
カリムの意味深な言葉にナナは警戒した。
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