私は翌日の午後に退院する事ができたけど、仕事はしばらく休むようにと言われてしまった。
なんだかあの詐欺師の思い通りになっているような気がしてムカつくけど、ここは表。抑えないと。
「ナナ」
「カリムさん…?」
病院のロビーを歩いていると、何故か私服のカリムさんが椅子に座っていた。もちろんそんな連絡はもらっていないので内心少し驚く。
「体調は大丈夫か」
そう言ってカリムさんは椅子から立ち上がる。…私のことを待っていた?
「はい、大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」
「ご迷惑じゃねぇ、心配だ」
「ご心配おかけしました」
「素直か。………それよりお前、しばらく休みだろ?家まで送ってやる」
……カリムさんも休みなのかな。なんでわざわざ迎えに来たんだろう。それよりも家に送るって、そんなこと今まで一度もされたことないのに。…される機会もなかったけど。
頭によぎるのは、三人の先輩の中に人工的に焔人を作っている人間がいるという事実。
「カリムさんも私服ということは今日はお休みなんですよね。なのにわざわざ私を迎えに来てくださったのは、なぜなんですか?」
「なぜってそりゃ、お前が俺の部下だからに決まってんだろ。ーー行くぞ」
真実を知り、一日意識を失ったりしたせいで忘れていたけど、カリムさんはこういう人だったな。いつもクールで口が悪いけど、本当はすごく仲間想いの人だ。
私は玄関の方へと歩き出したカリムさんの後を追った。
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