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テスト期間6-部室編


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長い、長い、テスト漬けの一日が終わった。
教室から出たはなこは双子と角名、そして銀島の5人で部室に行く流れだったが、教室にスマホを忘れた事に気付き、一人だけ戻った。

「一人か。珍しいな」

『…あ、北さん。お疲れ様です。スマホ忘れちゃって、取りに行ってたんですけど…北さんももしかして部室ですか?』

「…せやな。特に用があるわけや無いんやけど、どうせ他のやつも来とるやろし」

部活はないのに部室に足が向いている。
それはどうやら途中まで一緒にいた二年生や自分だけでなく、部の主将、北信介も同じだった。




「………?」

『…なんか騒がしいですね』

北とはなこが部室に向かっていると、近づくにつれ、なにか妙な雄叫びが聞こえてきた。いつもの宮兄弟の喧嘩かと思ったが、違う。誰が何をしているのかーー。

ドアの前まで来ると、叫び声の正体が知れる。

「ええねん!もうええねん!」

『アランくんや』

尾白アランの声だった。
北もはなこも部室のドア越しに、何が起こっているのか予想はついた。
先輩にドアを開けてもらうわけにはいかないと、はなこは静かに部室のドアを開けた。

中では、床に座り込んだ尾白が、パイプ椅子の背に突っ伏して喚いていた。
その周りを他の部員たちが困ったように囲んでいる。練習のない放課後の部室に、まるで申し合わせたかのように部員たちが揃っているのはどうかと北は思ったが、この際そのことはよかった。自分自身も来ているわけだし。

そんなことよりこの騒がしい状況を収めなければ、また教師が来てしまうかもしれない ーー と、思ったのは北だけでなく、マネージャーであるはなこもだった。

「もうええねん!実力を見せるのがテストやねん!しゃあないやろ、実力以上のものは見せられへんねん……しゃあない……ねん……」

『(…力尽きた)』

椅子にしがみついたままブツブツと愚痴りだした尾白のほかに、もう一人様子のおかしい者がいた。
おとなしいので、まだ北の目には入っていなかったが、はなこはむしろ雄叫びをあげていた尾白よりも先に見つけていた。

ダラリと力なく椅子に座って宙を見ている様は明らかに異常。こちらは宮治だ。

「俺にうまいこと教えられへん教師がヘボなんちゃうんか……あいつら、なんでペナルティないねん。減給やろ、減給……」

責任転換も甚だしいが、テストの結果はまだ出ていないのに大した落ち込みようの治を同級生や後輩が「まぁ、まだわからへんやん」「せや、テストだけが全てやないで」と励ます。

そんな中はなこは、やっぱ中身侑やなと呆れながら、尾白や治を囲む部員たちの輪に入っていった。

『甘やかさんといて』

そこではなこに気づいた後輩達が揃って挨拶をする。北にはまだ、誰も気づいていない様子だった。それに関しては、今日は部活ではないし、北も傍観しているしいいかとはなこは思っていた。

『せっかくテス勉付き合ったげたのに、そんなできんかったん?』

「おったんかい。…もうちょい優しい言い方せぇや。お前一応女やろ」

椅子に座ったまま、恨めしそうにはなこを見上げる治。
" 一応女やろ "発言に周りの後輩は笑いながらも、こんな可愛い先輩にそれはあかんやろ、とか、宮兄弟は男前やさかい、はなこ先輩みたいな美人に一応女とか言うても許されるんか…などと考える。

『女に見えた?ありがとう。で、どんくらいできひんかったん』

「なあはなこ!俺にも聞いてや!」

男バレマネージャーの七志はなこは部員は勿論、他の部活や生徒の間でも美人だと認められている。
バレー部に入部して半年以上経つ一年生や、隣の部室の男子ははなこが部室に来るたび、未だに喜んだいる。

「英語の裏面、古文のやつ、数学の因数分解」

『…めっちゃあるやん』

「なぁ聞けや無視すんな!」

『侑は聞かんでもわかんねん』

「お前の教え方が悪かったんやな。全部教えてもらってこんだけ出来ひんてなると。お前も減給や」

ーーなのに宮兄弟と来たら、普通の女子に対する態度よりも態度がデカイというか酷い。

ーー ブチっ。

『…まず給料すらもろてませんけど?ボランティアですけど?それやのに文句言うその態度、今日こそ反省さしたるわ』

真顔で右拳を握ったはなこを、すかさず銀島が「静まれはなこ!早まるな!」と止めた。