聞いて1(一年生編)
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__________…七志はなこ。
バレー部のマネージャー、二年同じクラス。
高校で仲良うなったきっかけはクラスメイトやったいうんもあるけど、一番は今のキャプテンの北さんの勧誘。ほんで実は小学校の時のクラブチームのライバルやったセッターやったいうことやろな。
小学校高学年、セッターやり始めた頃の俺に、刺激と憧れと嫉妬を焼き付けた人物であり、俺が最初に取り入れたプレイヤーの一人。
16年間生きてきた中でも衝撃的な出会い。多分これを運命言うんちゃうかと思う。
再開したあの日から俺は、この子の夢も背負とる。
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「マネージャーやってもらえんやろか」
俺が一年の時、北さんは二年。
今と変わらず誰に言われるでもなく、掃除とか片付けを毎日"ちゃんと"反復しとったけど、それ以上でもそれ以下でも無いいう感じやったから、存在感は今ほど無かった。
せやから北さんが俺の教室来たことはおろか、俺の斜め前の席の女子に堂々と礼儀正しくマネージャーの勧誘しとるんが北さんやと気付くんには時間が掛かった。
今思っても、北さんが女子にそのセリフは衝撃的やろ。
「……!?北、さん!!?」
「…侑か」
「チワス!」
オウ、って短い返事。
今お前に構っとる時間はあらへんとでも言いたげな顔で俺を見て、すぐに女子の方に向き直る。俺らが入学して一週間ちょいで何やっとんやこの人はと思ったけど、北さんの性格考えたら多分知り合いか、なんかの理由で目つけとって頼みに来たのどっちかやと思って、とりあえず聞き耳を立てた。
『いいですよ。部活迷ってたんで』
「ほんまか。助かるわ」
『今日行けばいいですか?』
当時の俺は北さんがわざわざ勧誘しにきた女子が誰でどんなんなんか興味があった。あの北さんが女子に頼み事するいうんは、ウチの部ではそんくらいの事やった。
入学から一週間ちょいで、仲ええ奴も知らん奴の名前もちょいちょい覚えたけど、その女子の名前は知らんかったし話した事もなかった。
「侑、お前今日の部活はなこ連れて来たってくれ。監督に話ししに行くから」
「えっ…と、マネージャー志望…?なんすか?」
そこで振り向いたその女子。
「せや」
はなこって言われとったっけ。
キレーな黒髪に白い肌。あと、華奢。あー…今、思い出した。なんか野球部と空手部の奴がクラスで一番可愛いとか、部の先輩が狙っとるとかって言いよった子か。
……え?ちょ、待って。
なんで北さんがそんな子と?そんな子を?
なんで?てか呼び捨てやったよな?
どういう事なん?__________混乱。
俺はますます気になった。
はなこちゃんはお願いしますて俺に軽く会釈しながら笑う。俺は合わせて笑いながらかまへんでって返した。
「ほな頼むで」
「ウィッス」
コレが俺にとっての衝撃的な出会いになるとは、この時はまだ知らんかった。
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