キツネのお正月10-2
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「ええ、ホンマかスマン!大丈夫やったか?」
トイレとドリンクバーからとうに戻って席でハンバーグを食べていた銀島は、はなこがチャラい男子に絡まれて囲まれていたと角名から聞かされる。
銀島は角名とは対照的に熱い性格の持ち主だ。
熱意と責任感。そして仲間を大切にする。銀島ははなこに心底申し訳なさそうな顔で謝った。
『うん、大丈夫。っていうても倫太郎が来てくれたからなんやけど。倫太郎な、めっちゃ凄かったんやで。何も言わんと立っとるだけやのに、金髪のチャラ男転かしてん』
「それはヤバイな。かっこよすぎやろ。でも金髪のチャラ男て俺の知り合いにも一人おるんやけど、そいつちゃうよな?宮侑言うんやけど」
「あーその金髪の場合ははなこで事足りるわ」
『まぁその金髪と今日喧嘩してんけどな。あと銀髪』
会話の流れの中でボケた銀島にしっかりと乗っていく角名とはなこ。流石は一年半以上の付き合いか。三人の顔は笑っている。
「ああせや、その話や。聞かしてや」
『めっちゃしょうもないで』
「双子って時点でしょうもないのは目に見えてる」
部の主将こと北信介が登場する双子との喧嘩ストーリーを話し出すはなこに、角名と銀島は注目した。
はなこは全てを話した。
最後に残った一つの餅で喧嘩を始めて、そこへ偶然現れた北がその餅を双子のどちらでもない"神様"に捧げると双子から餅を取り上げるだけ取り上げて帰っていって、そのとばっちりで双子にキレられて、流石にムカついて怒ったら喧嘩になったと。
「完全にアイツらが悪いな」
「北さん面白すぎ」
「ちょっとほっといたら?実質幼馴染や言うとったけど、やとしてもはなこに甘え過ぎやねん」
「優男」
『うん、もう疲れた』と本当に疲れた顔ではなこがいうと、追加で頼んだ大盛りポテトがきた。
『ていうか、二人とも正月から男同士て寂しいな。好きな子おらへんっけ?銀前おった言うてなかった?』
「おったけど…ってその話はええやろ?しかも男同士ちゃうで!今日はまぁ、マネージャーやけど、一応女子おるからな!」
「一応女子(笑)」
『えー過去形』
「そういうはなこは?上からも下からもモテるやんお前」
『モテへんし、好きな人おらへん』
「双子は?アイツら顔はええで。知っての通り」
『嫌や』と即答するはなこに二人は笑う。だろうな、と。
すると、ファミレスの入り口の方から「おう、銀やん!」と数人の男子が手を振る。銀島は「おー!あけおめー!」と手を振り返しながら入り口の方へ行った。
『倫太郎、そういえば肩治った?』
「あーうん。まぁ整体通いつつだけど」
部活の休みが始まる少し前から角名の肩の調子がおかしかったことを思い出す。
怪我ってほどの事では無かったし、軽く疲労がたまっている程度で練習にも支障をきたしていなかったのに、そんなことよく覚えてたなと角名は内心感心する。
『湿布とかテーピング、やるんやったら任せてな』
「ありがと」
マネージャーの顔でニコリと笑ってそう言ったはなこに、双子がはなこに付きまとうのも分かる気がすると思った。
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