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深夜零時の夢
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「娘の遊びに手は出すな」


それが目出井組組長、はなこの父親が全ての傘下へと下している命令。
その命令は彼女が買った喧嘩や護身術振るうような状況を指す。故に例え劣勢になろうとも手出しは許されない。

娘には十分な武器を与えてあるし、それを余す事なく使うだけの護身術を教えてある。
なにより彼女は幼い頃から極道の仕事を組長である父の隣でずっと見てきた。そこらのチンピラや年数の浅い組員よりずっと強く場数を踏んでいるのは確かだろう。だからこそ、父親ははなこの自由な行動を許している。母親との一件に対する罪滅ぼしでもあるのかもしれない。

____________しかし、娘に対する溺愛が治った訳ではない。これはあくまで"可愛い子には旅をさせよ"のことわざに則った命令である。

「娘に怪我を負わせた者は丁重にもてなし報告しろ」

____________重ねて幹部クラスにはこう命じられている。…まるでこれこそが本音と言わんばかりに。

「はなこお嬢、その怪我では返せません。今医者を呼びますから手当だけでもしてもらいましょう」

特に粟楠会の四木や赤林が部下を通じて命令通り彼女を見張り、心から心配もした。

「君達さぁ…おいちゃんの可愛いお友達に手を出した罪は指が何本あっても足りないよぉ?」

彼女は女だ。けれど生まれた時からこの世界にいる。それがあの子の世界であっても心配だった。何故ならば極道の世界というのは、極めて男の多い___________否、男ばかりの世界なのだから。

『心配される…されてるってことが、どういうことかよく分からなかった。お父さんの"心配"は歪んだ愛で、お母さんを危うく殺人犯にしかけたから。……怖かった。誰かの暖かさとか優しさに応えると、誰かが不幸になるかもしれないって』

「違うよ。君が怖いのは、その不幸になった腹いせに自分が傷つけられることさ」

『……たしかに怖いし嫌』

「でも君は、心配を受け入れようとしたね」

『…………うん。海月さんの目、今まで怖くて見れなかったんだけど。顔を近づけられた時目が合っちゃって』

「合っちゃって?」

『………本当に心配されてるって、わかった』

「そう。それでどうするの」

『………受け入れてみようと思う。誰かの優しさとか愛情を』

「__________________そう」




【深夜零時の夢】


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