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歩く黒い沼
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「俺たちさぁ…ほら、ダラーズって聞いたことない?ちょっと募金活動してるんすわ」

______________夕暮れ時、ダラーズを名乗る
というか実際にダラーズのメンバーである数人の男が会社員の中年男性を囲んでカツアゲをしていた。

「ご協力願えませんか?」

ダラーズの男の1人が中年男性の頬を二、三回叩く。他のメンバーもニヤニヤと下品な笑みを浮かべ、ゲラゲラと声を出して笑った。

と、その時。中年男性が追い込まれて背を向けていたコンクリートの壁から、ひょこっと目出し帽を被った小柄な人影が登場する。それに続いて同じ目出し帽をした者が二、三人現れた。

目出し帽に猫耳のカチューシャをした一番最初に出てきた少年は言った。

「俺らもダラーズにゃんすよー。お手伝いさしてもらっていいすかねー?」

「おいおい、なんだってそんな分け前減るような真似しなきゃいけねーんだよ!散れコラ!」

「あぁいえいえ違いますって。そこのおじさんに言ってるんすよー」

「はぁ?てめぇらなに言って…」…ゴッ…!!

______________男の台詞を遮ったのは誰の言葉でもなく、目出し帽を被った少年のうち1人がバッドで殴りつけた鈍い音だった。殴られた男は勿論カツアゲしようとしていた彼らの仲間で、地面に倒れてからはピクリとも動かない。

「てッ……てめぇ!!」

「まぁアンタらの携帯をちょっと借りてー、ダラーズのサイトから退会手続きをさせてもらいまさーねー。
それがウチらのリーダーのお望みなんでね」

「ッ…。」

大人しく携帯を渡せばいい。しかしどう見ても相手は年下___________このまま引き下がるわけにはいかない。そう、カツアゲ連中は思っていた。

その現場に、たまたまはなこは訪れる。ブルースクウェアが使用している車がこの路地を入るのを見て、なんとなく気になって見に来たのが理由。もちろんカツアゲ連中には"ただの通行人"にしか見えないわけで。

「ッハハ!この女がどうなってもいいのかァ?」

_____________グィ。はなこは通行人として男のひとりに首を絞めるように捕えられた。

『たまたま通っただけ。気にしないで』

ネコは軽く頷く。

「いやぁこんな偶然あるんすねー。
…まぁ取り敢えず。ただの通行人だと思ってるなら今のうちに離した方がいいっすよ?」

猫耳カチューシャの少年の目は真剣だ。
けれど男達は気づけない。いや、分からない。何が起こるのか、彼女が誰なのか、何者なのかを。

【歩く黒い沼】

______________ゴッ。

はなこの首を締めていた男はパタリと倒れる。最初に倒れた男よりも反応はなく。

そしてその背後に立っていたのは、青みがかった髪の少年。凹んだ金属バッドを投げ捨てる。

「怪我はないですか?はなこさん」

黒沼青葉。

『うん、大丈夫』

「よかった。…お前らちゃんと仕事しろよ」

「お前がバッド持って歩いて来るとこ見えたからにゃー。それにしてもこんな偶然あるんだな。二人とも来るって言ってなかったし」

『私は車が路地入ったのを見たからなんとなく来てみた』

「俺は後で合流するつもりだったし、それがたまたま早くなっただけだ」

はなこと黒沼は偶然訪れた理由をメンバーに言って聞かせた。

「それよりはなこさん、ちょっと二人だけで話したいことがあるんですけど…いいですか?」

『今?』

「はいっ」

『わかった』


____________二人が去った後。


「アイツ(黒沼)、はなこさん来たら顔変わるよな」

「いやまぁ、あの人俺らに関わってんの信じられねーくらい可愛いからな」

「いやその前に極道ってのが信じらんねぇ。青葉のでっちあげなんじゃねえの?」

「いやそれがマジなんだって」

「じゃあ俺らもやばくね?」

「それは大丈夫だってはなこさん言ってたろ。それが契約だって」

「にしてもさ」

「「可愛いよなぁ……」」



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