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赤鬼と歪
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病院を抜け出したらしい折原から"見舞いの礼に今晩の夕飯を奢る"という約束通りの連絡を受けたはなこは竜ヶ峰と別れた後、早速折原が指定した店へと向かう。
何しろ今日の夕飯は奢りで高級寿司食べ放題______________故に足取りは軽く、気分上々。
でもそんな時に限って邪魔が入る。
「見つけたぞ!この前はよくも仲間の足を潰してくれたなァ!?」
公演を横切った時だ。武器を手にした男達がはなこを取り囲む。この前のダラーズが更に人数と武器を増やしてまた来たらしい。
正しくは折原に振られた女の友達の彼氏で、その愉快な仲間達。
『今からお寿司を食べに行くので、後にしてもらえませんか?』
それだけは譲れない。
ちなみにはなこの好物はサーモンで、今そのサーモンが楽しみで仕方ない。
「ハッ!行けると思うなよ!」
_____________1人男が飛び出せば、たちまち全員が女1人に武器をもって襲いかかる。
『んー』
サーモン、サーモン、サーモン。
頭にはそれしかない。いつものはなこなら一発目、二発目は避けて体術をお見舞いするところだが、今日は生憎サーモンのことしか頭にない。
『邪魔です』
片手に短ドスを持ち、向かってくる男に狙いを定めた____________その時だった。
ドスをもった方の手を誰かに掴まれる。サーモンのことしか頭になかったせいか、気配を察知できなかった。
「いやぁ、いけないねぇお兄ちゃん達」
『…』
大きな手に、がっちりと掴まれた右手。視線を声のする方へ向けると、サングラスをかけたいかにもな男が立っているではないか。
「はぁ?邪魔すんじゃねぇぞオッサン!」
バットを振りかぶった一人の男。
しかし、あっという間に地面に寝る羽目になった。サングラスの男が、赤子の手でも捻るかのように、持っていた杖で突いて倒したのだ。
「公園の前で、しかも女の子一人を相手に武装した男が束になるのは感心しないよ、おいちゃんは。そもそもこの子が何処の誰か分かってこんな事してるのかな?」
はなこは力を入れて、手を離そうとしているがプルプルと震えるばかりで握られた手をどうにかすることはできそうにない。
______________仕方ない。そう思い
空いた左手にもう一つの短ドスを瞬時に握り、自身の右手を握る男の手に振り下ろし、手の甲にあたる寸前で止めた。退かさなければ切る。
「久しぶりに会ったけど…相変わらず物騒だね、はなこちゃんは」
声のトーンも表情も、そして握ったままの右手の圧力も変わらない。はなこの左手に握られた短ドスが、その右手の甲を今にも刺そうとしていることも。
「刺さないのかい?」
男はどうぞと言わんばかりに、なんの抵抗も見せない。ダラーズの集団はこの異様でただならぬ雰囲気に立ち去った。
「いやぁ、優しいねェはなこちゃんは」
『なんのつもりですか海月さ_______ンッ!』
一瞬だった。空いた手ではなこの左手を掴み、捻ってドスを落とす。そして両手首を持って片手で拘束する。
「折角大人っぽくなって色気も出てきたんだから、ダメだよこんなの持ってちゃァ」
__________________彼、赤林海月ははなこをよく知る者。
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