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取引成立
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____________面白いことが好き。
特に危険でハードな駆け引き。
抑圧されて、なんでも駄目なんて、
もう願い下げなんだから。
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『ふぅん。要件はわかった。
でもさ、ブルースクウェアってかなり暴力的なカラーギャングでしょ?それなんで女の私を勧誘?そこすごい謎。事務でも作るの?』
冗談交じりにそう言って、クスリと笑うはなこ。しかし黒沼は決心した黒い表情のまま「暴力的だからこそですよ」と言い、最後に
「せんぱい」と妖艶な声で見つめた。
明らかにその目は、何かを知っている。
「ああ、すいません。
”本名”で呼んでから要件を伝えた方が良かったですね」
____________知っていた。
「目出井はなこ先輩」
いつの間にか先輩呼びになったことに、彼なりの意思を感じながらもはなこはニコリと微笑む。
その笑みは、自分のことをそこまで知っている事と、その立場を知りながらも単独で近づいてきた事への敬意を評して。例え目出井という姓を隠して、普通に生きてきた彼女であったとしても。
『それを知ってよく絡んできたね。君はかなり頭のキレる子だと思ったんだけど』
「先輩がこれまで本名を隠して普通に生きてきたのは知ってたので」
『そうは言っても家が出てこない保証はないよ』
「勿論リスクは考えてましたよ。
でも、先輩____________こういうの好きでしょ」
それは核心突いたセリフ。
「実は俺、昨日先輩が拐われたとこに偶然居合わせちゃったんですよね。まあ平和島静雄と折原臨也が出会ったところから見てたんですけど____________だから、はなこ先輩が”わざと”睡眠薬入りの紅茶を飲んだのも、縛られてる途中から起きてたのもぜーんぶ知ってるんですよ、俺」
『え〜。青葉くん人聞き悪いし、性格も悪いよ。……でもまあ、間違ってはないかもね?』
それは決して嫌味な言い方ではない。
ただ、そう思ったからそう言った。そんな感じだ。寧ろ当たり前の反応より軽いと言える。黒沼は拐われる前からの一部始終を見ていた癖に、助けることもなく観察していたのだから。
『はなこ、スリルが大好物なんだ。なんでかはわからないけど、ずっと昔から。
だからいいよ。その話のってあげる。二つ目の要件はなに?』
「ありがとうございます。二つ目の要件は、ブルースクウェアの”守りの役”をやってほしいんです。
知っての通り過激なことを色んなとこでやってるんで、結構反感買うんですよねー」
悪びれる様子もなく、困った顔でそう言ってのけた黒沼。
『つまり守りっていうのは、その処理をしてほしいって事でいいの?』
「はいっ。あとは俺たちが動いてる時に邪魔するヤツの相手をお願いします」
『わかった。反感買った連中が押しかけて来たら私の名前とその時の居場所を出してくれればいいよ』
「流石、話が早くて助かります。
…でもすいません。先輩がいくら強いとはいえ女の人なのに…」
しゅん…と申し訳なさそうに謝る黒沼に『その代わり私がピンチの時は青葉君が私を守る。これ、条件ね』と微笑する。黒い笑みではないが、本気なのは間違いないだろう。
「勿論ですよ。はなこさんは俺が責任を持って守ります」
『…それじゃ、取引成立かな?私そろそろ行かなきゃ。先輩待たせてるし』
「……ああ、そうでしたね。」
”先輩”というワードに若干の苛立ちを感じる黒沼。その正体が、彼が心から嫌悪感を抱く男だからだ。
しかしここで怒りを露わにするわけにはいかない。たった今仲間になったはなこが目の前にいるのだから。
「今日は本当にありがとうございましたっ。
それと、これからよろしくお願いします」
怪しく、そして無邪気に笑う黒沼。
そんな彼に手を振って去ったはなこはまだ知らない。
____________折原臨也が道端で刺されたことを。
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