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物騒なのは君
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盛大に嗤った折原臨也。

「も、妄想なんかじゃないです…!」

それでも目尻に涙を浮かべながら負けじと応える美緒に、折原は表情を無に近いものに変える。美緒…いや、女子全員を見下ろすその視線は、まるで目の前ではなく二、三段階段を登った先から全体を見下ろされているようで、その場の全員が全身で感じる。”なんかヤバイ”と。

「人間って希薄だよね。」

いや、君はもういいよと言わんばかりに視線を逸らす折原。____________わけがわからない。
ヘラヘラしていたと思ったら、美緒に期待させ、そうかと思えばそれは妄想だと一刀両断する。

そんな折原にグループの一人が完全に腹を立てた。立たないはずがない。

「…っアンタさっきから聞いてればマジ意味わかんないんだけど!美緒に期待させるようなこと言っといて爆笑しながら”妄想”って斬り捨てるとか、なんなの!?」

「そ、それだよね!マジ!」

「うちの彼氏ダラーズだし、今から呼んであげるよ」

「え〜それは怖いなぁ」

両手を上げてお手上げと言わんばかりに笑う折原に、今までずっと黙っていた美緒が何かを構えた。

「おっと。もしかして自己愛欲の強いリストカッター?メンタル弱そうだもんねェ」

煽るような視線を美緒に向ける。
それはとても鋭利で、刃に赤い錆が所々付着したカッターナイフ。そして折原は口角を上げた。

「美緒!…う、後ろ!」その時だった。
美緒庇ってキレていた女の一人が危険を知らせるように叫ぶ。美緒は不意に振り返ろうと顔を動かすが…「ああ、後ろは振り向かない方がいいよ。」と、折原に止められる。

「というか人にそんな物騒なモノ向けた時点で未遂であっても犯罪者なんだから、俺に背を向けちゃダメでしょ。例え俺に女の子をどうにかする趣味は無いとしても__________」

「人の…気持ちを…!…っ踏みにじった癖になんなの…!」

美緒のそれは、反発心だった。
どんな小さなことでも彼の言うことは聞きたくない、と。だから忠告を無視して後ろを振り向いてしまった。____________スパ。

美緒の頬にシッカリと赤い線。そこから滴る赤い液体。そうしたのは、その線を描いたのは____________カッターナイフの何倍も斬れ味のある、”ドス”だった。そしてそれを持っていたのは、くるりと丸い目を大きく開いた無表情のはなこで。…異様な光景。

「い……………いゃぁあああぁああッ!!」

痛み、そして恐怖。美緒はその場に倒れるし、他の女子は全員叫び声をあげて路地から逃げ出した。

「なに……するの…!!」

切れた頬を抑えながらはなこをキツく睨む美緒。

『私はね、”臨也先輩に告白するあなた”に協力したの。フラれて泣いたり怒ったりするのはいいけど、刃物向けるのは…』

「どうせあんたが仕組んでたんで____________」

ザっ。たしかに一度仕舞った筈のドスがまた現れ、今度は美緒の右目の前に突き出される。問答無用で意見を押し通すその行為に殺気はなく、まるでこうするのが当たり前とでも言うかのような顔。

『仕組むなら最初からこうするし、臨也先輩には会わせない。臨也先輩ははなこの大事な先輩だからね。…あ…えっと。はなこが何を言いたいかわかったってもらえた?』

「ご……ごめんな、さ…ぃ」

美緒の両目から溢れる涙。
はなこはニコリと微笑んで、向けていたドスを引っ込めた。そんな光景わニヤリ笑いながら見つめる折原と目があった美緒はゾクリと背筋が凍るのを感じる。

「っ…!」

美緒も走って逃げる。
残された二人。

『すいません、あんなタイプとは思わなくて』

そう言ってドスを仕舞うはなこ。

「別にいいよ。刃物を向けてくる女の子はそういないからね」

『あれ、それ嫌味ですか?』

「どうだろうね」


そう言って、何事もなかったかのように隣に並んで歩く二人。一見第三者が見れば普通の男女だが、片方は極道の会長の娘で、片方は新宿で情報屋をしている、それこそ極道とも繋がりのある一癖も二癖もある男で。




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